患者さんの周りまで幸せにしたい。進谷医師の「病院の外」へ向けた想い

幼い頃抱いた生命への関心

−医者を目指した理由を教えていただけますか?

もともと小学生の時から生き物が大好きで命というものに興味がありました。そして、絶滅危惧種の問題に関心があり、幼いながらに、人間の自然破壊に対して課題意識を持っていました。そのため、小学生の時は、理不尽に生命の命を奪う人間なんて絶滅してしまえばいい。僕は絶滅危惧種を保護するレンジャーや獣医になりたいって思っていました。そんな中、医者という職業を意識するようになったのは、小学校高学年の時に、動物図鑑を見ていて、類人猿に「人間」という生物が載っていることに気づいた時だったと思います。動物を救いたいと言いながら、動物である人間を否定している自分の中の矛盾に気づきました。その時から、確かに自然を破壊しているけど、そうせざるを得ない理由があるのかもしれない。僕は人間も含めた動物を救える人間になりたいと思いはじめました。

 

–中学校時代は何かきっかけはありましたか?

中学の頃に印象深い経験があります。私は福岡県京都郡苅田町出身です。田舎で地元愛が非常に強い町で、苅田出身の人は自分たちを苅田人と呼びます。九州人でも福岡人でもなく苅田人なんです。そんな町に生まれたので、私も地元愛がとても強かったと思います。今もですが(笑)。とてもいい町なんですよ。今でもたまに帰省して、町を散歩していると、公園で遊んでいる子ども達が大きな声で気軽に挨拶してくれます。今の日本には中々なくないですか?友だちのことも大好きで、「自分はこの町で一生を終えるんだ」とか「仲のいい友達と一生関わっていきたい」とか漠然と思っていました。そんな時に大好きだった先輩の死から、市というものを意識するようになり、いつの間にか、「友だちが死ぬ時にその側にいて、お疲れさまっ言える存在でいたい。そうすれば友だちの人生は幸せになるはず。」と思うようになりました。そのためには医者になった方が良いんじゃないかと考え始めました。

 

–他に何か印象深い経験はありますか?

つい昨年の話ですが、実家に帰省した際に、おばあちゃんから突然、「憲亮ちゃんは中学校の時の友達に感謝せないけんよ。憲亮ちゃんが急に受験のために勉強しはじめても、仲間外れにするわけでもなく、勉強を邪魔するわけでもなく、登下校の時も遊ぶ時にも、いつも勉強してる憲亮ちゃんの側にいてくれてた。それはすごいことよ。みんなのおかげで憲亮ちゃんは小倉高校にも受かったし、お医者さんにもなれたんだと思うよ。」

唐突に言われたことでしたが、僕自身、本当にその通りだと思いました。中学に限らず、これまでもずっと家族や友だち、出会った人たちに支えられてきたからこそ、今の僕がいると思っています。そして、いつでも帰れる場所が沢山あります。

何をするでも帰る場所があるということがすごく心強いです。日本のために何か活躍したいという想いはありますが、いつかは絶対自分を育ててくれた地元に帰って貢献すると決めています。

 

医師としてのこれまでの活動

−これまでの医師としての活動で大切にしてきたものはありますか?

医療は病気を治すことではなく、人を幸せにすることであるということを、自分の中ではとても大事にしています。そして、病院で医師として働く中で、「患者さんの問題は病院の中ではなく、病院の外にある。病院の中だけで医師として活動していても人を幸せにできない。」という課題意識を持つようになりました。

その上で、「病院の外で医者としてできることは何だろう?」ということを意識してきました。病院を川下だとすると、川上である病院の外、つまりは地域社会、人々の生活の場に近い場所で、医師としてできることがもっとあるのではないかと。

 

 

 

−実際にどのような活動に取り組んでいるのでしょうか?

実際に病院の外に目を向けるようになった時に、はじめに抱いた思いが「やばい。社会のこと何もわからない。」でした。医師は常識がないとよく言われますが、僕はその典型でした。社会の仕組みや、他の人たちが社会でどんな活動をしているのか全くわかっていないということに改めて気づき、まずは仲間と情報を集めなければと思うようになりました。お世話になっている方からの後押しもあり、2016年1月から月に1回東京都内で異業種交流会を始めました。人と人とがつながり、情報を交換し合う場を作っていきました。活動しているうちに興味を持ってくれる人が増えてきて、僕自身が沢山の出会いを頂くようになりました。同時に、色んな仕組みや既存の活動について知る機会も増え、自分自身の活動の幅も広がっていきました。

 

そんな中で、2016年7月に大学時代からの仲間たち一緒にNPO法人地域医療連繋団体.Needsを立ち上げました。その仲間との出会いは学生時代に参加した、「未来プロジェクト」というチーム医療について考える勉強会でした。その会でたまたまグループが同じだったメンバーと意気投合し、学生時代から様々な活動を共にしていました。その関係は、働き出してからも変わらず続き、小さいながらに毎年行っていた活動を、1つ形にしたいと、現共同代表の伊東から提案されたのをきっかけにNPO法人を設立。自分たちの課題意識、そして理想を実現すべく動き出しました。

 

−どのような想いで活動しているNPOですか?

「医療者が活動できるプラットホームを病院の中だけでなく、外にももっと作っていきたい」という思いがありました。自分が外に目を向け、異業種交流会を開催する中で、同じような想いを抱きながらも、何をしていいのか、何ができるのかわからず、一歩を踏み出せていない医療従事者がいることを知りました。そういった人たちがもっともっと自信をもって、病院の外へ活動を広げられるような活動の場を作っていきたいと思いました。今の日本にはそれが必要だと、医師として病院という現場で働く中で、漠然と感じていました。

 

 

これからのビジョン

−今後さらに実現していきたいことは?

専門職として、診療以外で今後やっていくべきことは「教育」だと考えています。今の日本では医療者と非医療者の知識の格差が年々大きくなっています。しかし、その知識の中にはごく当たり前に誰もが知っておくべき知識も沢山あります。また、医療は療従事者の専売特許の様に思われがちですが、教えるのは僕たちであっても、実行するのは自分自身です。予防するのも、薬の処方を受けて、管理・内服するのも自分自身です。自分でできない場合には家族です。結局は医療従事者や病院に依存するのではなく、一人一人がある程度は自分自身で知識を持っておかなければいけません。だからこそ、僕たち専門職にとって提供するだけではなく、きちんと教えるということも重要な役割だと思っています。

 

僕たちの法人は主に北九州市を拠点に活動をしていますが、様々な形でその地で暮らす人たちに教育を行っています。学校教育の場や地域の集会場に足を運んで、お話をさせてもらったり、地域の人たちを集めて、自分たちの暮らす地域について考える会議を定期開催したり、コミュニティカフェを運営して、人が集まり対話・情報交換をする場を運営したり、「様々な形の教育」を通して、北九州市の人たちが主体的に、自分たちの暮らす地域について考え、より健康な地域にするために活動できる様にサポートをしています。今では、北九州市自治体、北九州市医師会、社会福祉法人、大学校などとも連携させて頂き、産学官民が連携した形で、様々な事業を一緒に行わせて頂いています。新しいものを取り入れるというよりも、既存のものも大切にしながら、北九州市の歴史や文化、人々の価値観を知り、今実際どんなことに困っているのか、ニーズを引き出し、それに対して、地域住民の方が主体的に動いていける様に、NPO法人としてサポートできたらと思っています。

 

そして、2年後の2021年には北九州市で開業するつもりでいます。その時にも、僕たちがいいと思うものを作りというよりも、この2年間、北九州市の人たちと一緒に考えながら、北九州市に求められるものを、一緒に作っていきたいと思っています。北九州市民の方々からの雇われ院長みたいな形がいいなーなんて思ってたりします。その方が、住民の方々との距離も近くなり、またお互いの声も届きやすくなると思うんです。そして、困っているのはあくまでも患者さん、つまりは住民の方々です。住民の方々の声なしに、その地の医療は成し得ないと僕は思っています。僕の法人は北九州市を拠点にし、共同代表含め、1人の北九州市民として、活動をしている者もいますが、そうは言いましても、今はまだ、僕は東京在住なので、北九州市からすれば外の人間です。2年後、実際に僕自身も北九州市民となった後、どの様にその地に貢献できるかは今から楽しみです。残りの2年間はそれからのための修行だと思って、たくさんのことを経験し、学べる様に頑張りたいと思っています。

 

−最後に、将来の目標を教えてください。

これまでお話させて頂いた様な活動の先に、僕は医療者も患者さんもみんなが幸せな社会を夢みています。まずは過重労働で海外からもクレイジーだと言われる日本の医療者の役割をいかに減らすかを考えています。今僕たちがやっていることの中には、医療者がしなくていいこともたくさんあると思っています。それを医療者がしなくていいようにするだけで、医療者ももっと余裕ができ、自分たちにしかできないことに専念できるようになります。そうすれば、医療の質ももっともっと良くなると思います。そして、その鍵は病院の中ではなく、病院の外にあるように感じています。NPO法人の活動を通して、そこにアプローチしていけたらと思っています。その結果、医療者も患者さんも、みんながもっともっと幸せになれる社会を実現できたらなと思っています。

 

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