呼吸器感染症の分類と画像パターン〜病変部位・経過/原因微生物/気管支肺炎と肺胞性肺炎〜

救急外来でよく出会う肺炎、気管支炎. 現場でどのように見分けてるのでしょうか.

この記事は、医師同士疑問解決プラットフォーム “Antaa” で実際に行われたやりとりの中から学んでおきたい内容を回答いただいた先生に執筆いただいております。

呼吸器感染症の分類と画像パターン〜病変部位・経過/原因微生物/気管支肺炎と肺胞性肺炎〜 

救急4年目

先日後輩から非定型肺炎と慢性気管支炎の違いを聞かれ自分の中で用語が整理できず、うまく返事ができませんでした。教えてください。

肺炎と気管支炎ってどうやって見分けていますか?

また画像で肺炎の起炎菌はわかりますか?

呼吸器内科7年目

非定型肺炎は、細菌性肺炎の分類[/keikou]で、例えば、肺炎球菌性肺炎とかと区別する、分類の中の1分類と理解しています。

一方で、気管支炎、気管支肺炎は、炎症の起こっている場所で分類したものです。

気管支炎は基本的に気管支の炎症、肺胞腔にまで炎症を及ぼし、レントゲンなどで肺胞腔の滲出液を伴い陰影が確認されて来れば、気管支肺炎と言っていいのではないでしょうか。

 

和田 武

呼吸器感染症の「原因微生物からみた分類」と「病変の部位からみた分類」、「経過による分類」を混同されているのかなと思います。

画像的には「病変の部位からみた分類」が重要ですので、気管支肺炎と肺胞性肺炎のCT所見について整理して、気管支炎についても意見を述べたいと思います。(→ポイントレクチャーへ)

 

救急11年目

救急医の立場から

肺炎を画像で判断するのは危険ですね. たいてい脱水があり陰影は初期にははっきりしませんから. また陰影があってもそれがただ単に炎症の波及ということもあります. 右下葉の誤嚥性肺炎が典型的ですね. 淡い陰影があり肺炎と診断したものの実は肝膿瘍, 胆管炎, 腎盂腎炎などというのはよくある話です.

それよりもラム染色や聴診所見, 病歴から診断したほうがよいでしょう.

気管支炎か肺炎かは初期には判断が確かに難しく, 気管支炎に抗菌薬が必要かははっきりしません. なぜならそれらが連続する病態であることがしばしばだからです. なので診察時の全身状態すなわち重症度で判断するのがよいと考えます.

ちなみに

マイコプラズマやクラミドフィラは初診時に診断がつかなくとも予後を悪化させません. しかしレジオネラは死亡率が高く注意が必要です。

肺炎をみたときにはレジオネラではないか, 結核ではないか, そもそも肺炎かは必ず考える癖をもつようにしています。

 

Dr. Wadaの “ポイントレクチャー”

 ここでは呼吸器感染症の病変の解剖学的部位、経過からみた分類や、原因微生物からみた分類と肺炎の画像所見を解説します。

がん研有明病院 画像診断部 和田 武

 

1. 呼吸器感染症の分類

 1.1 病変部位・経過からみた分類

この分類は呼吸器感染症が生じている部位からみたものであり、解剖学的な炎症の部位から病名を決定し、原因微生物を絞り込むために有用な分類です。

声帯より上位は上気道、下位は下気道と称され、上気道を主体とした炎症のうち、最も有名なのが急性上気道炎(かぜ症候群)です.

下気道に関しては,気管、気管支、細気管支、肺胞と種々の部位に炎症が生じます.気管や気管支、細気管支のみに炎症が留まれば,気管炎や気管支炎,細気管支炎という名称になり,肺胞まで炎症が波及すれば、肺炎と考えることができます.

これらの解剖学的部位による分類に経過による分類を加えると,下記の表のように分類することができます1)

 経過
  急性慢性
部位上気道感染急性上気道炎, 急性副鼻腔炎慢性上気道炎, 慢性副鼻腔炎
下気道感染急性気管炎・気管支炎・細気管支炎慢性下気道病変の急性増悪・持続感染:慢性気管支炎/COPD, 気管支拡張症, 陳旧性結核, 非結核性抗酸菌症, 慢性気管支喘など
肺炎市中肺炎, 院内肺炎, 肺膿瘍肺結核, 肺非結核性抗酸菌症, 肺真菌症など

また,肺炎は気管支肺炎,肺胞性(大葉性)肺炎にさらに分類されます。

単純 X 線写真や CT は、これらの炎症の主座がどこにあるか、ということを判断するために用いられることが多く、原因微生物の同定に役立つこともあります。

1.2 原因微生物からみた肺炎の分類:細菌性肺炎と非定型肺炎

細菌性肺炎(定型肺炎)と非定型肺炎という分類や用語には変遷がありますが、現在では原因微生物からみた肺炎の分類と考えればよいと思います。

細菌性肺炎の原因微生物としては肺炎球菌を主とした種々の細菌、非定型肺炎の原因微生物としては MycoplasmaChlamydophila含まれます。

古典的には,肺胞性(大葉性)肺炎の像を呈する肺炎を定型肺炎とし、この原因微生物として肺炎球菌が最も多かったため、ほぼ肺炎球菌性肺炎を表現する用語であったと考えられます。

これに対比してグラム染色や培養で原因微生物を検出出来ない肺炎を atypical pneumonia として区別していた経緯があります。

atypical pneumonia を「異型肺炎」と訳していた時代には Mycoplasma や Adenovirus がその主な原因微生物と考えられていましたが、 Chlamydophila や Legionella が発見されたためatypical pneumonia の訳語も「非定型肺炎」が用いられるようになりMycoplasma、Chlamydophila、Legionella の3つをその原因微生物とすることが過去には一般的になりました。

近年では,2005年に発表された日本呼吸器学会のガイドラインで、[keikou]マイコプラズマ肺炎と肺炎クラミドフィラ(クラミジア)肺炎のみが非定型肺炎[/keikou]として,診断基準が示されています2)

2. 肺炎の画像パターン

上述の通り,原因微生物が炎症を起こす部位によって,肺炎は気管支肺炎と肺胞性肺炎に分かれますが,これらは画像的なパターンとしても認識することが可能です.

 2.1 気管支肺炎

終末細気管支や呼吸細気管支に原因微生物による障害があり、炎症が気管支内から肺胞まで広がるのが気管支肺炎です.気管支に沿った広がりをするため,気管支の分布に沿った区域性の陰影を生じることが特徴です.

陰影の程度はすりガラス影〜浸潤影まで様々ですが,病変の主座は気管支内にあるので,気管支壁の肥厚と小葉中心性の陰影が基本です.この小葉中心性陰影が癒合して次第に大きくなっていくイメージで捉えましょう.

気管支肺炎のパターンをとる原因微生物は多くありますが,非定型肺炎のひとつ,マイコプラズマ肺炎も気管支肺炎のパターンをとることが知られています

特に娘枝という,主軸の気管支から単独で分岐する枝に病変が多いことが知られており,典型例では画像から診断にかなり近づけることもあります.

<図1: 気管支肺炎の CT 所見>]陰影は気管支に沿った(区域性)結節影と周囲のすりガラス影から構成されており,一定の距離を取って配列し,胸膜直下は保たれている(小葉中心性陰影)ことから細気管支を主として肺胞に炎症が広がっている様子が分かります.典型的な気管支肺炎の所見です.

 2.2 肺胞性肺炎

原因微生物が肺胞(細気管支よりも末梢)に到達し,この肺胞領域を主体として炎症が生じた場合には肺胞性肺炎の像をとります.

炎症細胞浸潤や滲出物などが,気管支だけではなく Kohn 孔や Lambert 管のような肺胞同士をつなぐ側副路経由でも進展するので,初期には気管支肺炎と異なり,「非区域性」の陰影を呈します

こちらも病変の程度によりすりガラス影〜 consolidationまで様々な陰影を示しますが,陰影内部に気管支透亮像を伴うことも多いです.

<図2:肺胞性肺炎のCT所見>右肺下葉,左肺舌区,左肺下葉に consolidation が認められます.左肺下葉の陰影は広範囲で,非区域性の広がりをしており肺胞性(大葉性)肺炎の所見です.左肺舌区・下葉では気管支透亮像がみられます.

 

呼吸器感染症や肺炎には様々な分類が overlap して存在しており,混乱のもととなっていますが,しっかりと整理して使いこなせるようにしましょう.

画像的には気管支肺炎と肺胞性(大葉性)肺炎を区別できるようになりましょう。

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3.参考文献

  1. 日本呼吸器学会「呼吸器感染症に関するガイドライン」成人気道感染症診療の基本的考え方
  2. 日本呼吸器学会 成人肺炎診療ガイドライン2017

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