5分でわかる「解釈モデル」 〜どんな外来でも役立つ家庭医療学〜

  • 2019年7月18日
  • 2019年8月21日
  • 診断
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突然ですが、外来で患者さんとうまくいかなかったことはありませんか?
こちらの説明に首を捻りながらお帰りになったり、きちんと説明したのに納得してくれない経験、一度はあると思います。
こんな時「解釈モデル」を知っていると、患者さんの満足度の高い外来ができるかもしれません。
外来で困ってしまった後期研修医の話から、解釈モデルを学んでいきましょう!

 

大蔵村診療所 深瀬龍 先生

外来で困ってしまった後期研修医の話

とある日の夕方、医局で後期研修医が一人ため息をついていました。

後期

「あー、今日もキツかった……」

家庭医

「おや、◯◯先生。久しぶり」

後期

「先生! お久しぶりです!」

家庭医

「初期研修の地域研修以来だね」

後期

「町立病院かぁ、懐かしいです。先生はどうしてこちらへ?」

家庭医

「今日は勉強会でたまたま顔出したんだよ。後期研修はどう? 整形は楽しくやってるかい?」

後期

「オペはいいんですけど……外来ってのがこんなに大変だとは思いませんでしたよ……」

家庭医

「なんだい、ずいぶんくたびれているね。私でよかったら話聞こうか?」

後期

「ありがとうございます。実は今日の外来で……」

 ★ ★ ★

今日は新患の当番だったから結構バタバタしていたんです。
その終わりくらいに、腰が痛い60歳男性が受診しました。

後期

「これはいつ頃から痛くなったんですか?」

男性

「10日前だったかな。痛みが治まらないから来たんだ」

後期

「10日前ですね。その間はずっと痛かったんですか?」

男性

「そうだな、しんどかった。なんとかウチにある薬で模様みていたけどダメだったわ」



後期

「じゃあ診察しますね。……診察上は問題ないですね。X線だけみせてくださいね」
腰部X線写真でも問題なかったので、急性腰痛症だろうと判断しました。
「X線写真で問題なかったので、心配ないですよ」

男性

「心配ない、ねぇ。これだけで本当に大丈夫なのか?」

後期

「骨に問題ないから、経過を診て大丈夫だと思いますよ」」

男性

「俺は10日も様子見たけどよくならなかったぞ?」

後期

「まぁ1回痛めるとしばらく時間かかりますからね。湿布と痛み止め出しておきますよ」

男性

「そんなもん、いらん! 時間の無駄だった!」

そう言って、男性は機嫌を悪くして帰っちゃいました。

 ★ ★ ★

後期

「……ってことがあったんですよ。なーんか後味悪くって」

家庭医

「ほほー、それでモヤモヤしていたんだね」」

後期

「間違った対応はしてないはずですけど、何であんな態度取られたのかなぁ」

家庭医

「何でだと思う?」

後期

「うーん……待ち時間が長くてイライラしていたとか?」

家庭医

「それもあるかもね。でも、私の読みだともうちょっと違うとこに答えがありそうだよ」

後期

「違うとこって、なんですか?」

家庭医

「【患者さんが先生に求めていたもの】と【先生の答え】がずれていたんじゃないかな」

後期

「えー???」

 

後期研修医の外来に眠るモヤモヤを簡潔に書き出すと、
【自分は正しい説明をして医学的に適切な対応を取ったのに、患者さんは怒って帰ってしまった】 です。

では、なぜ患者さんは怒ってしまったのか。
今回のケースで【患者さんの考えとあなたの考えのズレ】が起きていたと思われます。
「患者さんの考えなんて、そんな簡単にわからないでしょ」と思われているそこのあなた!
「解釈モデル」を知ることで、このズレを埋めることができます!

解釈モデルとは

解釈モデルとは、患者が病気に罹患したり体調不良を覚えた時、一人の人間として受ける様々な影響のことを指します。

我々医療者は医学・生物学的観点から病気を捉えます。
その観点において患者は素人ですが、それぞれが自分なりの捉え方・考え方で病気を理解しようとします。
(筆者は学生時代、脊椎カリエスの患者さんから「この痛みは狐につかれたせいなんだ」と話を聴いたことがあります)
ここにズレが生じた時、外来での会話が噛み合わない原因となるわけです。

解釈モデルを理解するためには4つのポイントに分類します。

  1. 解釈:自分の病気についてどう考えているか
  2. 期待:医療者に何をしてほしいのか
  3. 感情:患ってどう感じたか
  4. 影響:患って生活にどんな影響があるか

頭文字をとって「かきかえ」と覚えてくださいね!

では解釈モデルをどう把握すればいいでしょう?
⑴まずは傾聴
 忙しい外来だと思いますが、ちょっとだけ(20秒でも30秒でも)患者に語ってもらいましょう。患者が話をし始めてから医師が遮るまでの時間はたったの11秒という研究もあります。いつもより少しだけ患者の語りに耳を傾けるだけで、解釈モデルを理解することができるでしょう。

⑵引き出す声がけ
 とはいえ、慣れていないと傾聴だけで解釈モデルを掴むのは難しいと思います。
 こちらから患者の気持ちを引き出すような質問・合いの手を入れてみましょう。

 解釈:「〜〜について、何か心当たりはありますか?」
    「ご自身で心配なことはありますか?」
 期待:「今日、受診されたきっかけは何でしょう?」
 感情:「〜〜について何が心配でしょう?」
 影響:「〜〜のせいで日常生活に支障ありませんでした?」

 また、ある程度解釈モデルを把握したところで、
「☓☓さんは〜〜が心配で〜〜してほしい、ということでしょうか?」
……と、患者に確認してみるのも一つです。
 この時の患者が「そうそう!」と頷いてくれるなら、あなたと患者の間にズレは発生していません。自信を持って外来を進めていきましょう。
 ここで患者が悩み顔・腑に落ちない顔をしていたならズレが発生しています。もう一度解釈モデルを確かめにいきましょう。

  ★  ★  ★

家庭医「患者さんのニーズに応えた外来ができれば、お互い満足度が高くなるんじゃないかな」

後期

「がんばってね」

 ===
その翌週の外来で、あの時の男性が再診されました。

後期

「先週から腰の痛みはいかがですか?」

男性

「少し和らいてきたけど…まだ残っている感じで心配なんだ」

後期

「日中の生活はどうでしょう?」

男性

「……腰が痛くて、介護が大変なんだよな」

後期

「介護というと?」

男性

「うちの母がガンの末期でね。介護も辛いし生活もままならないし、ホント困っています」

後期

「それは大変でしたね、ご自身で心配なところはありますか?」

男性

「先生、俺ってガンじゃないよな?」

後期

「ガンが心配なんですね」

男性

「ああ。母も腰が痛くて病院に行ったらガンが骨に飛んでいるのが見つかったからさ」

後期

「そうですか、確かにそれは心配ですね」

男性

「骨にガンがないか調べることってできないのか?」

後期

「お話しして頂きありがとうございます。腰痛の原因がガンの症状なのではないか心配だということですね」

男性

「そうそう、そんなところです」

 つまり、男性の解釈モデルは
 解釈:腰痛はガンによる症状かもしれない
 期待:ガンかどうかを調べてほしい
 感情:腰痛が続いて心配
 影響:腰痛で母の介護・自分の生活がままならない
 ということだったんですね。

 解釈モデルを理解したおかげで話が進み、まずは近々予定されている健康診断をきちんと受けてがんのスクリーニングをしてもらうこと・介護サービスを使って腰を休め改善しない時に精査するか決めることとしました。
 この日の外来は笑顔で終了することができました!

 ===

 日々忙しい外来でも、「この患者さんは何を思って受診されたのだろう?」と立ち止まることで患者満足度をぐぐっと上げることができるはずです。
 その立ち止まるきっかけとして解釈モデルを使ってみてください。

Point

  • 解釈モデルを理解すると、コミュニケーションがうまくいく!
  • 解釈モデルとは「その人が病気・症状についてどう考えているのか」
  • 感情、期待、解釈、影響(かきかえ)を掴むと解釈モデルを理解できる

 明日からのコミュニケーションがいつもより楽しみになることを願っています。 

参考文献)
PMID:29968051
‪PMID:3956899‬‬‬
https://academic.oup.com/fampra/article-abstract/3/1/24/436063
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