今回はメルマガ特集第4回ですね。みなさん第1~3回のメルマガ特集は読んで下さいましたか?
今回のテーマは原発性アルドステロン症です!
診断に悩むことも多い原発性アルドステロン症について、注目の相談を紹介したいと思います!
原発性アルドステロン症とは?
原発性アルドステロン症は、副腎の異常によりアルドステロンがレニン非依存性に過剰産生される病気です。
二次性高血圧の中の原因の中でも最多かつ難治性であることが多く、全高血圧患者の5~10%ほどがこの原発性アルドステロン症によるとも言われています。
また、この病気による高血圧患者と同程度の本態性高血圧患者を比べると、原発性アルドステロン症による高血圧患者の方が、脳卒中等の心血管イベントを合併しやすいとされていて、見逃したくない疾患です。
しかし、アルドステロン過分泌の機序から起こりうると考えられる、低K血症などの典型症状をきたすのは実は少ないとされていて、原発性アルドステロン症なのか否かを判断するのは難しいことも多く、困った経験のある医師の方も多いのではないでしょうか?
それでは質問編です!
質問編
64歳女性、網膜色素変性症により全盲の方。
4ヶ月前、自宅階段から転落し急性硬膜下血腫、脳挫傷のため入院。意識障害強く気管切開、全介助の状態でしたが劇的な回復を遂げ現在は回復期病棟転棟し経口摂取・手引き歩行可能となりました。
受傷1ヶ月後からカリウムの低下を認めており、回復期でも低カリウム血症が遷延し、食事に加え内服で32mEq/日補充し、正常範囲を保てている状態です。もともとある高血圧も受傷2ヶ月後から増悪傾向で、アムロジピンを2.5mgから7.5mgまで増加しsBP130台となりました。ACE、ARBは使用しておりません。
ナトリウムなど他の電解質異常は認めず、甲状腺機能異常も認めません。
カリウムを低下させる薬剤の併用はありません。
高血圧、難治性低K血症から原発性アルドステロン症を疑いました。スクリーニングとしてレニン(ng/ml/h)/アルドステロン(pg/ml)比は57/0.3=190と微妙なところでした。
腹部CTにて副腎腫瘍は認めませんでした。
生食負荷試験ではレニン/アルドステロン比は負荷前82/0.6=136、負荷後56/0.2=280でした。
負荷後アルドステロンが60未満なので確定診断には至らないと思ったのですが、これ以上何度もレニン・アルドステロンを測定するのは回復期病棟でありコスト的に難しそうです。。
微妙な結果ですが、これをもって原発性アルドステロンとして抗アルドステロン薬を開始するのは妥当でしょうか?
ご教示いただけますと幸いです。
今回の症例ではレニンとアルドステロンの比は診断基準に引っかからない微妙なラインですが、低カリウム血症を認めています。
回答編
続いて、二人目の先生の回答です。
私もPAにしてはCCBのみで血圧コントロールが楽すぎる感じはしました。一応CCBでもPRA増加、PAC不変〜低下なので、ARRは低下するようです。が、あまり時間もコストも割けないならとりあえず調べたし抗アルドステロン薬を入れてみるのはありかなとは思ってしまいます。念のため…
それだけ原発性アルドステロン症の高血圧が抗アルドステロン薬なしではコントロールしにくいということなのでしょう。
治療に関して抗アルドステロン薬を使うのは、更なる検査のコストを考えると、有効であるとのことでした!
続いて、3人目の先生の回答です。
遅くなってすみません。お疲れ様です。すごい回復力の患者さんですね!良かったですね.日頃よくPAの精査をしている者です。結論から言うとPAの確定診断には至らないし、いまあるデータからすると全然それっぽくないです。おっしゃるようにスクリーニングは一般にアルド/レニン比 200以上なんですが、アルドステロンの絶対値の参考値は120以上とかなので、そもそもこの方は低すぎます。かつ…
大変失礼な物言いになるかもしれませんが、回復期病棟でここまで調べてくれるDRがいてくれているということに、なんだか心が救われました!for the patient、最高です。(中略)まず、ご質問のPAの可能性についてですが、他の方のご指摘もあるように、発症までの経過やホルモンSTUDYの結果(そもそも低アルドステロン)などから、可能性はかなり低いと考えます。
<頭部外傷と低K血症>救急医として重症頭部外傷後のICU管理をよくみる身としては、原因もつかめない、にっちもさっちもコントロールできない電解質異常は比較的よく遭遇します。有名なのは中枢性塩類喪失症候群による低ナトリウム血症ですが、…
回答の続きには、救急医としての立場から低K血症についても言及して下さったり、論文などもリンクを載せて下さったりしています。
まとめ
これで、第4回のメルマガ特集、原発性アルドステロン症についてを終わります。
原発性アルドステロン症は、今回は違いましたが、若年性高血圧の大きな原因の一つです。心血管障害の合併も多いので、確実に、なるべく早期に見つけて、治療を開始したいですね。
今回のように、多数の先生方によるディスカッションを見る機会はなかなか無いのではないでしょうか?ほかにもこのような質問がたくさんありますので、AntaaQAをぜひのぞいてみてください!
次回は、「ブスコパンの使用について」をテーマにする予定です。是非、お楽しみに!
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