メルマガ特集の第2弾!「脳梗塞の治療」についてです!
多くの医師が恐れる脳梗塞。そんな脳梗塞の治療といえば、早期発見してからのtPA静注療法が有名ですよね。しかし、tPA療法は革命的な治療法である一方、諸刃の剣としての一面も…合併症に脳出血や出血性梗塞があるために、とても適応が複雑な治療法でもあります。
そして、tPA療法ができない施設で勤務しているとき、みなさんはどのように対応しますか?今回は疑問に感じている方が多かったと思われる、脳梗塞についてのQAを1つ、お届けします!!
では、まず、質問文から見ていきましょう!
質問編
もともと意識レベル清明な心不全、SSS、肝硬変などの既往がある、移動ADLは車いす介助の87歳女性が、夕食後の突然の意識障害を来たし当直として呼ばれました。
バイタルは安定(血圧120,脈80,SpO2 95)、意識はGCS E1V1M5左共同偏視、右口角下垂、弛緩性の右片麻痺、時折右上肢の除脳肢位?を認めます。
発症45分後の頭部CTでは明らかな出血、梗塞は認めず、3時間後CTフォロー予定です。(MRI非対応のペースメーカーが入っておりMRI撮影不可です)ご家族は侵襲の少ない治療を希望されており、血管内治療やtPAは望んでいません。
(当方はtPAができる施設でもありません)今のところできそうな治療はフォローCT後にアスピリン300mg投与(経管)かな、と思いました。。オザグレルは使い慣れていません。。
上記の所見からかなり大きな梗塞が予測されるのですが、どのような対応が良いか、ご意見いただけますと幸いです。
さて、先生方はどのようにアドバイスをなされたのでしょうか???
回答編
年齢や、家族の理解が本当に十分であれば別ですが、家族の不十分な理解に基づく意向というのは、必ずしも、再開通療法の適応を変えるものではないと思います。
施設条件でできないのであれば、今からでも転送すべき症例かと思います。その上で…
こちらの先生は、別の施設に転送してでも、それぞれの再開通療法をすべきとのことですね。ご家族の方の意見は非常に共感できますし、尊重されるべき意見ではありますが、その意見が十分な正しい情報をもとにしているのかと言われると、そうでない可能性もありますよね。もし、その可能性があるなら、再開通療法を行い、最小限の被害で抑えるのが良いということですね。見方を変えると、そうしてでもやるくらいtPA療法とその他の治療法では差があるということですね!
また、その上でのtPA療法以外のことも言及して下さっています。
87歳の時点でt-PA、血管内治療は、あまり適応になりにくいと思いますよ。
グリセオールは、心負荷かかるので心不全既往にある方にはご注意を。
冒頭でtPAの適応の複雑さについて述べましたが、tPA療法の禁忌には、「重篤な肝障害」があったり、慎重投与の欄には「81歳以上」があったりします。また、グリセオールは脳浮腫に対する治療薬として使うと思われますが、心負荷の増大が起こります。(この患者さんは87歳で、SSS、心不全、肝硬変の既往あり。)
今回の件のように、既往歴が深刻で、さらに高齢の患者さんが脳梗塞を起こすと、治療法の禁忌との兼ね合い上、とても治療が困難になることがこの先生の回答からわかりますね!
次に3つ目の回答に行きましょう!
(中略)塞栓性脳梗塞だとすると、アスピリンやオザグレルは適応とならず、抗凝固療法が出血等がないことを確認してから開始となると思います。
神経保護薬のエビデンスはcotrovercial(むしろ有益性に乏しい)ので、現行では補液のみでの対処が一般的だと思います。一方…
症状から見てやはり左中大脳動脈の脳梗塞まではみなさん同じお考えですね。
バイタルが安定しているのが逆に不自然であるという意見はとても参考になります。
この方も、大きな禁忌さえなければtPA療法を行った方がいいという意見でした。命が助かるかどうかに加え、その後のQOLも比較的に損なわずに済むとのことですね。
結果的に様々な問題点を抱えた症例なのでtPAはやらないのが妥当とのことですが、大変参考になる意見をいただきました。ほかにもたくさんの意見をいただいたので、興味のある方は全文を読んでみてはどうでしょうか?
お疲れさまです! 大変な症例であったのかと思います。
(中略) 現行のtPA適正使用指針では高齢は慎重投与基準にありますが、tPAと標準内科治療を比較した研究のメタアナリシスのサブ解析でも、高齢者でもtPA群の方が予後が良いことは示されており、エキスパートの多くは必ずしも年齢のみを理由にtPA投与を躊躇していないのが、実情です。
(中略)今後については、広範梗塞、脳浮腫による脳ヘルニアのリスクとの戦いになるかと思います。MCA領域全域の梗塞であれば…
ただし、そのGOサインを出すか出さないかには専門的な評価が必要とのこと。しかし、今回は肝硬変も合併しているとのことで、行わないのが妥当との専門家からの判断でした。
2:心疾患の背景がある(PMなど)→心原性をより疑う。
3:院内発症の脳梗塞→TPAや血管内治療を考慮する、少なくとも選択肢は提示する必要がある。
4:治療は、何もなし(エダラボンくらい) です。
特に論点は3です。適応はなさそうでも、必ず選択肢を提示する、という行動が重要です。後から、なんでそういう話にならなかったんだ、と言われるのが1番辛いです。治療選択肢は常に提示する必要があります…
十分な説明と選択肢の提示は患者さん、ご家族の方々だけでなく、医師側にとっても非常に大切です。
より良い治療のために、インフォームドコンセントはやはり大切ですね。
まとめ
今回は質問は一つしか取り上げませんでしたが、一つの質問に関して多数の、さらにとても丁寧な回答をいただきました。
それにしても脳梗塞は恐ろしいですね…tPA療法は脳梗塞治療の歴史において本当に革命的なもので、それ以前の脳梗塞治療は現実的には厳しい成果だったと聞きます。
そのtPA療法が封じられた場合の対処法、tPA療法をやるか否か、読者の方々に少しでも伝えられたのなら嬉しいです。
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