様々な場面で使われる末梢静脈路. どのくらいの間隔で交換するのでしょうか.
この記事は、医師同士疑問解決プラットフォーム “Antaa” で実際に行われたやりとりの中から学んでおきたい内容を回答いただいた先生に執筆いただいております。

ルートの交換頻度ってどのくらいが適切なのですか??
3日で交換って言われたのですが、どの病院もそうなのでしょうか??

UpToDateの記載には3-4日以上の留置は感染リスクを増大させる可能性があるとされています。個人的な感想ですが3-4日で交換している施設が多いのではないかと思います。
CDCのガイドライン参照すると(Clin Infect Dis 2011; 52: e162–93. )感染のリスクを下げるために72-96時間よりも高頻度に末梢静脈カテーテルを交換する必要はない(1B)
とあり、96時間以上間隔をあけての交換が推奨されているみたいです。
最近の文献的には臨床的に必要な時に交換するので十分でそのほうがコストが抑えられる(Lancet. 2012 Sep 22;380(9847):1066-74.)、72-96h毎に交換するのはあまりエビデンスがない(Cochrane Database Syst Rev. 2015 Aug 14;(8):CD007798. )ということみたいです。
ここでは、末梢静脈路(ルート)のマネジメントとして、ルーチンの交換が不要であり、必要時(炎症、閉塞など)に交換すること、下肢より上肢が適していることをガイドライン等を含めて解説します。
原田 拓 HARADA TAKU
昭和大学病院総合診療科 助教
獨協医科大学病院 総合診療科 非常勤スタッフ医師
- 72-96時間毎での交換にエビデンスはない
- 臨床的に必要な時のみにすれば患者の負担やコストの軽減になる
- シフト変更時に挿入部位を検査し、炎症,閉塞,浸潤などがあれば交換する
]個人的な感想ですが3-4日で交換している施設が多いのではないかと思います。その根拠はどのへんなんだろう?ということで調べてみました。
ルーチンでの交換は不要?〜末梢静脈路〜
3-4日を超えると感染症のリスクがあがるのでは以前よりいわれており,1991年の前向きの研究では4日を超えて留置すると静脈炎が50%以上あったという報告もあるようです(3)。
しかし,その後3日を超えて留置しても合併症の発生率はかわらないのでルーチンでの交換は不要(4)という話がでてきたようです。
下肢より上肢〜カテーテル関連感染症予防ガイドライン〜(1)
- 下肢より上肢に留置する。下肢に留置した場合はできるだけはやく上肢に交換する。
- 感染症や静脈炎のリスクを減らすために72-96時間毎に交換する必要はない
- 末梢カテーテルの交換は臨床的に必要な時に推奨される
- 静脈炎(熱感,圧痛,紅斑),感染症,機能不全をおこしたら除去する
- 緊急時など無菌操作の保証がない場合での末梢カテーテル留置をした場合は48時間以内に交換を行う
という記載になっています。
その後の研究でもルーチンでの交換(平均70時間)と臨床判断での交換(平均99時間)で特に合併症は有意差がなかった(5)という報告があります。
炎症、閉塞など臨床的に必要な時に交換〜Cochrane〜
「72-96時間毎での交換にエビデンスはない。シフト変更時に挿入部位を検査し、炎症,閉塞,浸潤などがあり臨床的に必要な時に交換する方法でよい。その方が患者の負担やコストの軽減になる」といわれています(1.6)。
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参考文献
- Cochrane Database Syst Rev. 2015 Aug 14;(8):CD007798.
- Clin Infect Dis. 2011 May;52(9):e162-93
- Ann Intern Med. 1991;114(10):845.
- Arch Intern Med. 1998;158(2):151.
- Lancet.2012;380(9847):1066-74
- Cochrane Database Syst Rev. 2013 Apr 30;(4):CD007798
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