【仲本光一先生 インタビュー】こんなに面白い!外務省医務官の魅力と実情とは!

大使館や総領事館で医務官として長年活躍され、在外邦人の支援や災害支援などにもご尽力されている仲本光一先生にインタビューを行いました!数々の災難に対応されてきた仲本先生の根底にはどんなマインドがあるのでしょうか。

 

仲本 光一 先生 紹介

仲本 光一 先生

岩手県広域振興局保健福祉環境部技監 奥州・一関保健所長 / JAMSNET 東京理事長

1983年 弘前大学医学部卒業

1992年 横浜市立大学外科学 医学博士取得

1992年 外務省入省 ミャンマー、インドネシア、インド、ニューヨーク、タンザニア、カナダの大使館・総領事館で医務官として勤務

2014年 外務省診療所 所長

2019年5月~現職

 

ニューヨーク在勤中にアメリカ同時多発テロ事件(2001年)を受け、官民が連携した在外邦人支援の必要性を感じ、邦人医療支援ネットワーク、JAMSNET の立ち上げに参加した。

その後、ジャムズネット東京、カナダ、アジア、ドイツの設立にも参画。

2002年に第1回川口賞(外務大臣賞)、第7回多文化間精神科医学会学会賞、2007年米国日本人医師会功労賞を受賞。

外務省医務官の仕事とは

 

仲本先生

外務省医務官の仕事は基本的には大使館員とその家族の健康管理です。産業医的な立ち位置で、現地の大使館で勤務している職員の毎日の診療や健康管理をしており、それ以外で在外邦人とか旅行者の相談にも応じています。厚労省の医官とは違い、役人というよりも臨床医ですね。なので10年くらい臨床医として経験がある方を採用しています。卒業したてで臨床したことがありませんという人はちょっと難しいです。

実際のところ大使館には医務室というのがあって、日本から送られてきた少しの薬と簡単な血液検査機器や超音波があります。しかしレントゲンはありませんし、そもそも看護師さんとかいないんですよ。事務的な助手がいればいい方で、国によっては現地の看護師さんを助手として雇えることもあるんですけど、一人で何でも対応しなきゃいけないというのが一つ大きなことです。

究極のドクターコトーです。

今はだいぶネットがよくなったのでアフリカにいてもミャンマーにいてもネットで情報をとったり先輩に電話で聞いたりとかできますけど、私が医務官になったのは26、7年前ですから、ネットがなかったんですよ。国際電話もミャンマーとかは電話回線が凄い絞られていたので、日本に電話をかけようとするとつながるまで5時間かかるんです。

 
西山さん
え~~~~!

 

仲本先生

順番だから、すぐには繋いでくれないです。つまり、目の前に自分の専門以外の患者さんとか、他科の患者さんがいたとしても相談するのに5、6時間かかるんですよ。

例えば切迫早産の患者さんがいたとしても結局自分でなんとかしなきゃいけない。

でもそれは大使館の職員も在留邦人もみんな分かってる状況です。若い医者が一人で一生懸命やってるんだってことを理解してもらってますから、邦人とかに応援してもらって助けてもらいながらなんとか頑張ってやってました。もちろん入院が必要な時は現地の優秀なドクターと協力して、場合によっては日本まで搬送しないといけない時もあり、そういう時は搬送のお手伝いをしていました。

基本的には健康な人が(外務省から大使館へ)行ってるわけだから、そんなに毎日患者さんが来るわけではないんですね。それ以外の時は何をやっているかというと、現地の「こういう感染症が流行ってます」とかそういった情報を保健省や色んなところに行ってピックアップしてきて、それを東京に知らせたり、在留邦人に伝えたりしていました。

もうひとつのポイントはその国の医師免許がもらえていないことです。

なので、あくまで大使館、総領事館の中で大使館員を診る分にはいいけれど、大使館から一歩でれば、本当は医療行為をしちゃいけないんです。でも結局、その国で日本人の医者は私だけの時に在留邦人や旅行者から相談があったら「いや(現地の)医師免許はありませんから」とは言えないわけですよ。なので、大したことはできませんけど、なるべく相談に応じて、対応してました。

大規模災害やテロがあった場合は、外務省の仕事で「邦人保護」というのがあるんですね。その一環として医療的な対応が必要であれば、外で邦人にケアをしたり、空港で点滴をしたりしたことがあります。

私も臨床を経験してから外務省にはいったので随分勉強させていただいたというか、度胸がついて、面白かったですね。

 
西山さん

先生に憧れる方って沢山いると思うんですが、どんな人が外務省医務官に向いているか教えて頂けますか?

 
仲本先生

大使館や日本人コミュニティーは狭い世界ですから、コミュニケーションが上手な人じゃないとだめですね。

部屋に籠って患者さんを待ってるという姿勢ではなくて、いつもドアを開けて、あるいは大きな会議があったら顔をだして具合悪くなる人がいないかどうかをみるアウトリーチ的な姿勢とか、飴を配って歩くとか、彼は疲れてるなと気づくとか、そういうマインドを持った人。あとは、面白がる。いろんなことに興味がある人がいいと思います。

まあ私も結局、一つのところに落ち着けなくてそうなっちゃった。

 
 
西山さん

外務省医務官を志望する人を面談したときってどうやって向いてる人を見抜くんですか?

仲本先生

外務省に応募する人で国際協力と勘違いしてる人がいるんですね。外務省医務官は色んな人と出会いますから、国際協力する上で足場にはなると思います。ただ、外国人に対する国際協力の最前線に立ってるわけではないんです。あくまで臨床、色んな所でも生活できるフレキシビリティーというか。

あと、人間関係がちゃんと上手くできるか。例えば、応募してきた人で履歴書をみると、病院をよく代わっている人がいて、「なんで病院を代わったんですか?」って聞いたら「いや看護師の態度が悪くて」って言いました。そういうことを言う人はだめです。みんなと上手くできる人でないと。

外務省医務官は唯一の調整役になりますから。大使館の大使とも関係を持ちながら、弱い方の味方でもある。

私は実は人と話したくないほうだったんです。だから外科を選んだんです。職人みたいに仕事して終わったあと酒を飲むみたいなのが好きで外科医をやってたんですけど、在外にいくとほとんどメンタルです。まあ随分勉強しましたけど、そんな中で邦人のケアとかを色々やらせてもらってました。

 
西山さん
仲本先生の高いコミュニケーション能力はもともとそうだったのか、それともこういう仕事を通して高まってきたのか、ぜひ教えてほしいです。
仲本先生

人付き合いは好きな方でしたね。お笑い芸人になろうと思ったこともありますから。昔は本当にたけし軍団に入ろうと思ってたんですけど(^o^)。ただ、そうはいっても勉強しないとダメですね。精神科や心理の勉強は相当しないといけません。もともと素質はあったのかもしれないですけど、在外で鍛えられたんだと思います。

 
西山さん
何かひとつ「これによって鍛えられたなあ」という経験ってありますか?
仲本先生

えひめ丸の海難事故のご家族のケアを1年間に渡り、4回くらいハワイに行ってしたことがあるんですね。ずっと被害者の方と共にするって経験が糧になってますね。その後も北朝鮮の拉致被害者の方々のお世話をしたことがあるんですけど、そういう人たちが私を育ててくれたと思ってます。

 

えひめ丸の海難事故とは?

平成13年2月10日、ハワイ州オアフ島沖で愛媛県宇和島水産高等学校の練習船「えひめ丸」(35名乗船)が、緊急浮上したアメリカの原子力潜水艦「グリーンビル」に衝突され沈没した。事故当時えひめ丸には、生徒や教官、乗組員併せて35人が乗っており、高校生4人、教官2人、乗組員3人、併せて9人が行方不明となった。

仲本先生はご家族のケアを根気よく続けられ、その功績を称えられ外務大臣賞を授賞している。

 
 
西山さん
すごくサポーティブだと思ったんですが、自分が何かしなきゃという気持ちだったんですか?
 
仲本先生

自分しかいないですよ。そういう意味では本当に度胸です。自分が何かしなければ死んじゃうわけですから、責任を取る・取らないの話じゃない。

インドの空港で精神障害があって暴れてる人がいるから保護してくれって言われたことがあって…「地元の警察がやってくれよ」って思うんだけど、大使館に連絡があって、そういう時に、リスパダールを水に入れて飲ませて落ち着かせたりとか、もうやるしかない。それで病院に入れて、まあ幸いにして事故がなかったってだけで、本当に危ないことしてますよ。被害者だと思って対応した人が精神障害で、ナイフをずっと持ってて、私自身が刺されそうになっちゃったりとかもありましたし。本当にラッキーでしかないです。

 

 
西山さん
そんな怖い思いをしたり、自分しかいない場面を乗り越えられる強い精神は何に支えられているんですか?
仲本先生

面白がる精神ですかね。

 
西山さん
刺されそうになる経験でも面白いって思うってことですかね。
仲本先生

そうですね、結局おもしろかったですね。失礼な話なんですけど。

あとは芸事をなんかやってると海外でコミュニケーションの一つになります。私は大学でジャズピアノやってたので大使館の公邸で天皇誕生日のレセプションでピアノを弾いたりとか、バーバルだけでなくて違うコミュニケーションがあれば外国人も喜びます。そういうところで、自分も楽しみましたね。

あと、やっぱりできればご家族と一緒にずっといた方がいいです。

私の場合、はじめから子供がいたんですね。まあ家内はわりに「いいよ」って言ってくれる方で、私より英語は出来ないですけど、度胸は良くて。気がついたらマネーチェンジャーで値切ってましたから。そんなで子供もずっと一緒でした。基本的に家族は色んな事情があると思いますけど、一緒にいる時間の長さ、一緒に色々と体験することがやっぱり必要だと思いますね。

 

 

 
西山さん
自分が大変で疲れた時にそれをどうやって癒して、気持ちを切り替えてるのかなぁと気になっていたんですが、家族といることで支えになってたんですか?
仲本先生

本当にそうだと思います。日本で外科医をしていた時は子供を育てた覚えがなくて、気がついたら幼稚園いってるなぁとかだったんですけど、海外だと時間はあるので子供の運動会に行ったりとかずっと見てましたので良かったです。

 

 
西山さん
外務省の医務官の人は男性が多いイメージなんですが、実際はいかがですか?
仲本先生

1割くらいはいらっしゃいますよ。現地で捕まえて結婚しちゃったりとか。女性でも全然いけますよ。旦那さんが割とフリーな仕事というか、芸術家さんとかカメラマンさんとかだと行きやすいんじゃないですか。ぜひぜひ応募してください。

 

 

災害支援について

 
西山さん
3.11の災害時に先生が取られていた行動は、医療者として情報発信しないといけないと思ってされていたんですか?
仲本先生

そうですね、東北大震災の時にはタンザニアにいて、阪神淡路大震災の時はミャンマーにいたんですね。日本のテレビは見れなくてもBBCとかのテレビは見れますから、震災のびっくりするような様子が流れてて。

これは海外にいる日本の人に共通ですけども、外にいると日本への想いが凄く強くなるんです。今、私のバックが桜ですけども、“富士に桜”みたいな写真を見るとそれだけで涙が出てくるんですね。

外にいた3.11の時も居ても立っても居られないけど直ぐに帰国できるわけでもないしお手伝いできるわけでもないので、とりあえず、いろいろ情報を集めて、その時にはニューヨークにジャムズネットがもうできていたので、在外にいらっしゃる方々に日本の情報を沢山発信してた。それで安心した方もいたし、不安になった方もいたんですけども。そして1か月くらいしてから、なんとかニューヨークの人と一緒に、南三陸から福島、さらに岩手県の大槌町に支援に入りました。私自身は本当に短かったんですけども、東北とニューヨークのジャムズネットをつないで、今に至るまで10年間ずーっと支援しています。

↓インタビューを行った際、仲本先生のzoom背景には釜石市の桜並木の写真が使われていました。

 

 
西山さん
先生はすごくサポーティブだと思うんですけど、そこを面白がれるのは何でなんですか?
仲本先生

まあおっちょこちょいだから、、、あ、たぶんADHDですね(^o^)。

じっとしていられないのは確かで、よく「ひと呼吸おけ」っていわれるけど、できないんで、これはもうしょうがないですね。60過ぎてこの歳で、治らないです。

 

医学生・若手医師にメッセージ

 

仲本先生

もう医者の仕事は座って患者を待っているものではないと思うんですね。

やっぱり予防医学やリスクコミュニケーション、クライシスコミュニケーションも含めて、それが仕事だと思うんです。「政府に騙される」って皆さんがよく言うのは医者が悪いと思うんですね。やっぱり、ちゃんと啓蒙していない。そこはしっかり皆さんに町へ出ていただきたい。公衆衛生ってそういう仕事なんですけど…研究者ももちろん必要なんですけど、研究者も研究者でやっぱり発信するってことが必要ですね。

あと今、役所でやろうと思っているのは、高校生とか若い人からリテラシーを高める健康教育をしていったらいいのかなと思ってます。今度、横浜市大や東北の大学でも学生向けにそういう話をする予定です。

 

リスクコミュニケーションとは?

リスク分析の全過程において、リスク評価者、リスク管理者、消費者、事業者、研究者、その他の関係者の間で、情報および意見を相互に交換すること。

 

クライシスコミュニケーションとは?

非常事態の発生によって危機的状況に直面した場合に、その被害を最小限に抑えるために行う、情報開示を基本としたコミュニケーション活動のこと。リスクマネジメントの一環として、事実関係や実施する危機管理対応の内容を各ステークホルダー(利害関係者)に迅速かつ適切に伝達するのが、クライシス・コミュニケーションの最も重要な役割である。

 

外務省医務官のお話に限らず、予防医学や発信など、医師の役目として今後さらに重要になってくることについてもお話していただきました。

仲本先生、貴重なお話をしていただき、ありがとうございました!

 

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