【配信後インタビュー】天野雅之先生ご出演!「病状説明のハートとスキル」

2020年8月28日、天野 雅之先生(南奈良総合医療センター)にご登壇いただき、「病状説明のハートとスキル」というタイトルでオンライン配信を行ないました。

今年4月に天野先生が出版された著書『病状説明 ケースで学ぶハートとスキル』にあるCUP SOUPモデルに沿って、病状説明を理論&実践の2本立てでわかりやすく体系的にレクチャーしていただきました。

配信後、インタビューを行い、配信中では聞けなかったお話を伺いました!

また今回の配信では、天野先生にスライドをAntaa Slideにて共有していただきました。
ぜひ、配信と一緒にご覧ください!天野先生のスライドはこちら
 

天野雅之先生 プロフィール

天野雅之先生
南奈良総合医療センター
総合診療科・教育研修センター
家庭医療専門医・指導医
Executive MBA

病状説明での苦い思い出

山本先生
レクチャーで、医師3年目のときの失敗を話されていましたね。
天野先生

前立腺膿瘍からの敗血症性ショックで入院していた患者さんがいたんです。退院日を決めましょうという段階だったんですけど。
上級医に「用事ができたから、病状説明やっといてくれ」と急に言われました。
でも、当時まだやったことがなくて…。まず病気のことをわかりやすく説明しようと思い、「敗血症性ショックとは〜」という話をしてしまいました。

山本先生
病気の観点で進めてしまったんですね。
天野先生

まさにそうです。指導医からのアドバイスは「一生懸命説明しろ」だったので、一生懸命説明しました(笑)。
でも肝心のゴールを設定していなかった。
一時間ぐらい経っても、誰がステークホルダーなのか、退院日や退院の仕方とかを決められなかったんですよね。
遅れてきた上級医に「なんだまだ決まってないのか」と言われバトンタッチ。後で叱られました。

叱られかたも、「もっと場数を踏んでセンスを磨け」と言われて。じゃあどうすりゃいいんだよ、と(笑)。

この苦い思い出から、何かいい方法がないかと思い日々過ごしていましたね。

配信の中では、CUP SOUPについて丁寧にわかりやすく説明していただきました!

ビジネススクールという選択

山本先生
失敗から2年後にビジネススクールに通われたということですが、どうしてですか?
天野先生

全ては「志水太郎先生」なんですよね。

学生時代に病院見学でニューヨークに行ったんです。
そこで桑間雄一郎先生の姿を見て総合診療に惹かれました。
日本でも総合診療が学べる場所がないかと検索したら、志水先生がヒットしました。
ブログ記事や先生の御活動内容をみて是非会ってみたいと思い、メールしたんですよね。

山本先生

それで志水先生との繋がりができたんですね。

天野先生

研修医1年目の5月に会いに行きました。

いまは違うと思いますが、当時の臨床研修って、問診と身体所見はサラッと終わってすぐ検査、誰もグラム染色やっていない、みたいな状態で。
学生時代に抱いた理想の環境と、実際の現場が全然違ったんです。
意気消沈していた時に、藁をもすがる思いで行ったのが志水先生のところです。

今でもよく覚えているのですが、説明の仕方とか紹介状の書き方も含め、志水先生の診察の様子や患者さんや周囲の人との関わり方を見て、「この人みたいになりたい!」と強く思いました。
そこから長期休暇や年休を使って、志水先生に教えてもらいに定期的に東京に行きました。

山本先生

そうだったんですね。

天野先生

僕が5年目になるとき、「僕は5年目でMBA取りに行ったけど天野先生はどうするの?」と志水先生に聞かれました。「取ります!」と即答しました。
その後に、「先生、MBAってなんですか?」となったのですが(笑)。

MBAについて調べると、意思決定や不確実性、チームビルディングが学べるとわかり、自分がしたいことと通じていると感じました。
それで土日を使ってビジネススクールに通いました。

山本先生

そしてビジネススキルが先生の本の理論にもなっているのですね!

家庭医療学〜本のもう一つの要素〜

天野先生

この本には3つの領域にまたがる様々なエッセンスが入っています。
ビジネススクールで学んだ経営学に基づく不確実性や意思決定
学生時代に演劇や音楽で培ったチーム力や状況を俯瞰的に見る力
そして家庭医療学における患者医師関係

家庭医療学も初めから興味があったわけではありませんでした。
たまたま勤務先に家庭医療プログラムがあり、誘われたので所属してみたという軽い気持ちでした。

家庭医療学って学び始めはハードルがあって、1年目のときは面白さがよくわからなかったんです。
ただ、偶然開いた書籍に佐藤健太先生が紹介されていて、「家庭医療学って実は面白いのかも」って思ったんですね。
それで、会ってみたくてメールしたんです。

 
山本先生
会いたいと思ったら、すぐコンタクトを取られるんですね!
天野先生

「ここだな!」という瞬間が見えたら、直観を信じてすぐに動きますね。

それで会いに行ったんです。北海道に。

そこで家庭医療学のすごさを教えてもらいました。
志水先生以来の衝撃を受けたのをよく覚えています。

山本先生

なるほど。この本、今までの先生の人生みたいな感じですね。

総合診療の未来

天野先生
総合診療にも学問基盤が必要で、そのうちの「家庭医療学」は学際性が高くて、いろいろな他の学問と相性が良いんですよね。
なのでプライマリケアの現場に関わっている先生は、まず医学の部分をしっかり学びつつ、同時にちょっとだけでもいいから、医学以外のものも学んでおくといいと思います。
山本先生

そうですね。
山中克郎先生が、患者さんのベットサイドで、「これはモネの絵ですか?」と話を広げた、というのを聞いていいなと思いました。

天野先生
素敵なエピソードですね。
相手の趣味や生きがいを話題にお話できることも重要だと思います。
山本先生

医者・患者も一対一の人間ですし、人生の先輩と接しているわけですし。

天野先生

そういった「人」を大切にする姿勢は総合診療で大切な部分ですよね。
それを「心意気」「マインド」で片づけずに向上心と探求心を持って研究し、理論化して、みんながハッピーになる社会を目指すのが総合診療の姿かなと思います。
わかりやすい病気や手技があるわけではないので、このあたりの「総合診療の“見える化”」が重要だと考えています。

研修医時代に「総合診療やりたい」と言うと、「総合診療はよくわからない」という理由で指導医から反対されることが多かったですね。
まだまだ課題は多いですが、ようやく総合診療にスポットがあたりはじめました。
これからの日本に絶対に必要な領域で、どんどん発展していて、めちゃめちゃ面白い分野です。
興味を持ってくれる学生や研修医が、不自由なく総合診療にすっと入れる環境作りをしていきたいですね。

ロールモデルの存在

山本先生
天野先生は医学生向けの勉強会を開いたり、後輩の指導に積極的に関わってらっしゃいますよね?
天野先生

「後輩の特権だから、上級医にはどんどん甘えたらいい。そしてその恩返しは、上級医にしてもらったことを後輩にしてあげることだ」という志水先生の言葉が染みついているんでしょうね。
僕は沢山、先輩方に助けていただいたので、自分に出来る範囲で後輩に還元したいと思っています。

また志水先生は「ロールモデルとなる先生が、自分と同じ学年のときに何をしていたのか聞け。それを超えろ」と言っていました。
志水先生も「TdP」という勉強会をされていたので、いつかは自分も勉強会を通じて医学界に貢献したいと考えていました。
志水先生の略歴は常に意識し、どうしたら追いつけるか考えています。
まぁ、全然、追いつけないですけどね(笑)。

山本先生

自分は自分というふうに、志水先生にはないところを伸ばしていくのもいいと思います。

天野先生

志水先生も「自分自身が成長していれば、周囲は気にしなくていい」という考え方でした。
また、「師匠をみるな、師匠のみつめる先を視ろ」という格言の通り、僕が志水先生と同じことをしても意味がないので、それを引き継いだり、発展させたいと考えています。
わかりやすいところで言うと、志水先生のエッジの一つは診断戦略です。
ということは医師が頭の中で診断を組み立てた次にすることは病状説明じゃないですか!

山本先生

天野先生の得意分野ですね!

病状説明のトレーニング

山本先生
私はもう3年目なんですが、病状説明がとても難しいと感じています。
天野先生
医学部時代や研修医時代医に学ぶ機会が少ないことと、上級医が気軽に使える「教え方」が無かったのが原因かなと思います。
僕は病状説明とは「未来のありかたを関係者と協力して作り上げる共創のプロセス」だと定義しています。
相手は患者さんに限らず、上級医報告や他科コンサルト、他職種への指示の伝え方も大きなくくりでは病状説明だととらえています。
これらは臨床現場では極めて重要なステップなのに、キャリアの初期ではほとんど学ばないですよね。
山本先生
たしかに全然学ばないですね。
天野先生
でも研修医になっていきなりさせられるし、専攻医になったら責任付きで絶対にするじゃないですか。
自分自身が苦労した分、なんとか経験できる機会を提供したいと思って学生向けの勉強会をやっているんですよね。
山本先生

私も働くまでコミュニケーションの取りかたを全然知らなかったです。
どうしたらわかりやすく説明できるのか、指示を立てられるのかが難しかったです。

天野先生
CUP SOUPなど学生さんにやってもらうと、とても上手になるんですよね。びっくりするぐらい。
こうして、
あたたかい病状説明が広がり、臨床現場に安心と納得が広がるような世界ができたらいいなと思っています。
山本先生

先生の今回のレクチャーが、その第一歩、第二歩になっていたら嬉しいと思います。

医学生インターンの感想

今夏より医学生インターンをしている、川嶋と申します。

病状説明を行うことはまだないですが、私自身、医師となったときコミュニケーション力が欠かせないと思い、大学入学からの3年弱、様々なバックグラウンドを持つ人と接することを心がけてきました。
ですが自分の考えを理解してもらい、さらには相手のニーズを察しそれに応えることの難しさを実感します。同時に、的確な言葉でスムーズにコミュニケーションをとれる人を見て憧れもします。

今回、記事を書くにあたり天野先生とお話をしているなかで、「つながりに投資する」という言葉が登場しました。私自身も「会いたい!」と思い、コンタクトを取りに行った経験が幾度かあります。そこで得たつながりが、浪人で不安に潰されそうな私に勇気をくれました。そのつながりの中での、沢山の言葉が支えてくれました。
私自身、高校生のときに体験記(文字数にして10万字ほど)を書いた経験があります。そのとき、言葉は人を傷つけてしまうこともある一方、誰かを支えることができると感じました。

だからこそ、その場のニーズを把握し、寄り添うことのできる会話スキルは、とても強みになると思っています。
天野先生のCUP SOUPに基づいた病状説明のスキルを学生の間に学び、今後に活かしたいです。

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