【出演者インタビュー】新しい専門領域!総合診療専門研修の未来を語る

2020年6月5日(金)に、新たな専門領域!総合診療専門研修の未来を語るという座談会をオンライン配信にて開催しました。

ご登壇いただいたのは若手医師有志で「専門医機構総合診療専門医検討委員会に、Changeを!」と題しオンライン署名活動キャンペーンを立ち上げた三人の先生方です。

当日の様子を医学生インターン村田がお伝えします。

私は和歌山県立医科大学医学部医学科地域医療枠の4年生ですが、学生からすると初期研修後の専門研修についてはあまり情報が入ってこないのが現状です。

そんな中で今回のオンライン配信を通して、総合診療のさらなる魅力を発見すると同時に、総合診療専門研修の課題を自分事として捉えることが出来ました。

総合診療専門研修に課題があることは確かに不安です。しかし、総合診療について語る先生方は総合診療という学問にときめいていらっしゃって、それでいて物凄く真剣な様子でした。現にこの3人の先生方をはじめ、新専門医制度をより良く変えていこうと動いてくださる方々の存在自体が、総合診療医の明るい未来を物語っているのではないでしょうか。

読者の皆様がこの記事を読んで、総合診療の世界を覗いたり、より安心して総合診療の道に進んでいただけたらと思います。

登壇者自己紹介

 

高瀬 義祥 先生(富山大学附属病院総合診療部)

「医師6年目で富山県で総合診療医として働いています。今は109床くらいの病院と山間部の診療所で働いています。今日はよろしくお願いしますお願いします!」

 

徳田 嘉仁 先生(近江八幡市立総合医療センター/滋賀家庭医療学センター)

「医師8年目で救急と家庭医療の両方を専攻しています。急性病院の中で総合診療医としての役割を果たせたらなと思ってやっています!」

 


横田雄也 先生(岡山家庭医療センター)

「医師4年目で専攻医2年目なので、今回は専攻医の当事者としてお話できたらと思います!」

なぜ総合診療を目指したのか

徳田先生
今回は僕たちのやっている署名活動の思いを皆さんに共有できたらなと思ってこの配信をさせていただいてますが、そもそもなぜ総合診療医を目指したのかというところからお話ししていけたらなと思います。
横田先生
僕は最初、医者のイメージが町のお医者さんだったんですね。町のお医者さんが実際にどういう専門なのか全然知らないままに医学部に入って、医学部で実習をやっていく中で全般的にみれたらいいなぁとジェネラリストに憧れている気持ちがありました。その中で総合内科に出会って総合内科医を目指していたんですが、初期研修中に地域に出て家庭の背景とかを見ながら活動している医師がいて、その時に「これが僕がなりたいと思っていた町のお医者さんそのものだ」と思ったことから興味を持って家庭医療学を勉強するようになりました。そして初期研修が終わって専攻医になる時に、ちょうど同じくらいのタイミングで総合診療専門研修が始まると知って、今この専攻医に進んでいます。
高瀬先生
僕が総合診療医を目指したのはもともと中高校生の時から動物行動学の本に出会ってハマってしまって、人がどんな行動をするのかに興味があって、それを体感出来るお医者さんって何だろうって思ったときに、やっぱり臓器横断的なお医者さんがいいなぁと思ってました。そこで大学に進んで総合診療医の先生に出会って、総合診療医になろうと決めました。また、総合診療医を目指している妻にも影響を受けました。
徳田先生
家族に影響を受けたんですね。なるほど。

僕は初期研修の時はあまり総合診療医について知らなくて、ポリクリ中に小児心外の先生がカッコイイなぁと思って研修医を始めました。初期研修が終わった時に、とりあえずは急性期をしっかりみれるようになりたいなと思って救急の専攻医として研修先に残らせてもらいました。

毎日の救急業務の中でやり甲斐も多いんですが、不全感というかやるせなさがありました。それを1番よく感じたのは、前日退院させたばかりの誤嚥性肺炎のおじいちゃんが、また運ばれてきて同じように検査をして内科に入院依頼をする、といった経験です。そこで生まれた「これ毎日何やってんのかな」という不全感を解決する方法は救急医学や内科学にはなくて、色んな島医者を経験された先生のお話や家庭医療学のことを聞いてみると、自分が救急で感じた不全感って家庭医学が解きほぐしてくれるんだなと思って4年目から家庭医療学に進みました。家庭医療をやっているとより救急が面白くなって、今はまた救急もやっています。

好奇心旺盛な人が向いている!?総合診療医の性格について!

横田先生
僕は個人的な性格として飽きやすいというか…
 
高瀬先生
あるあるですよね!
徳田先生
飽きないですよね~、総合診療ってあっちこっちに興味のある先生多いですよね。
横田先生
興味は飛びまくりですよ。でも色んなところに興味が湧くからこそ役に立つこともあります。
あまりにも深いし広いし、人を見るって簡単に一言で言うけれどもめちゃくちゃ大変だなぁ、と。
でもそれだけ価値があるというか、やりがいがあると今でも思いますね。
高瀬先生
そうですよね、何でもポジティブな気持ちで取り組めそう。
横田先生
とりあえず飛び込みますよね、ファーストペンギン的なところはあるかもしれない。
自分もちょっとファーストペンギンになりたいみたいな。(笑) 
徳田先生
やっぱり総合診療医を目指したところって人への興味が大きいですよね。
総合診療医の性格についてお話が盛り上がり、コメント欄にも共感の声が多数よせられました!

総合診療の魅力とは!

 
高瀬先生
今、取り組んでいることが「このフレームワーク使ってるな」とか考えながらできている時が自分の中で成長したなと思えます。そうやってフレームワークを用いて言語化して、周りに伝えるっていうのは大事ですよね。
徳田先生
そうですね、「人を見る」において家庭医療学の中のコア・コンピテンシーで学んだ分析するスキルがあって、分析しながら人を見つつ、感情的なケアをしているというか、その両輪が上手く回ってる瞬間があれば凄く心地いいですよね。
高瀬先生
そうですね、自分を客観視できてるというか。
横田先生
たしかに、「人を見よう」「社会的背景をもっと見よう」と初期研修の時に言われていたんですけど、本当にこれ出来てるのかなとか、これは何に基づいてやってるんだろうという徳田先生の仰ったような「不全感」みたいなものがあったんですよね。これに家庭医療学や総合診療といったちゃんとした学問がある、しかもそれを専門医研修として学べるっていうのは、それまでベテランの先生方が長年かけて臨床で学んで培ってきたものを、しっかりエッセンスとして学べるということだと思います。学問としても総合診療医は面白いですよね。
高瀬先生が「言語化が大事だ」と仰ったように、徳田先生からも「総合診療医は言語化のプロだ」と伺いました。
総合診療は決して漠然と患者を診るのではなく、全般的に分析した上で整理し、言語化していく学問なのだそうです。

今回の署名活動について

始めたきっかけ

徳田先生
今まさに総合診療専門研修を受けている人にとっては指導医がしっかりして下さっているので、なんの疑問も不安も無い方もいると思います。

ただ、マスで見ると、特に新専門医制度になってから少し専門研修が見えにくくなっているのかなぁと思っています。やっぱり僕が勉強会とかを開催していても研修医や専攻医の方から総合診療って先が見えない、不安だと言う声がたくさん聞こえてくるんですね。それに対して「大丈夫だよ!」と言ってあげられない悩ましさを感じていました。

そこで同じ想いを持っていた先生方と署名活動を始めました。

横田先生

最初は署名活動もハードル高いなぁと思っていたんです。研修始まって1年間、不安に思うことやもっとこうなったらいいなぁと思うことが色々あって、それでも実際にアクションを起こすことってあまりなかったんですね。それでも、今回、徳田先生の後押しがあって動きました。

たしかに自分が今いるプログラム自体は歴史もあって安定しているし、その通りにやれば僕も一定のレベルに達すると思うんですが、全国的な総合診療専門研修という枠組みでみると本当にこの研修をして、「私は総合診療専門研修を受けました」って胸を張って言えるのかどうか、という不安感があります。

 
高瀬先生
私はお二人に誘っていただいたのがきっかけです。

思い返せば、僕は新専門医制度が始まる前にも署名活動をしていて、それは内科研修が増えて外科研修が必須化されるんじゃないか、という点で理解の透明性と、学ぶ人の立場に立った研修をしていただきたいという話をさせて頂きました。

僕自身は旧制度の研修をしていて、僕の一個下から新専門医制度になったんですけど、それなら3年間後輩の声を聞き続けていました。彼らが「どういった勉強をすればいいだろう?」とか、「この専門研修はどうなるのか?」といった疑問に対して正しく答えられているのかなぁと自分自身も凄く不安だったんです。今回、ポートフォリオが大きくがらっと変わったのを受けて、もう少し透明性があって、当事者がもっと関わって一緒にいいものを作っていけたらなぁと思って署名活動を始めました。

徳田先生
SNSとかで総合診療の先生が色んな不安だったり疑問を挙げてくださってたと思うんですけど、僕もこれは動かないといけないなと思ったきっかけはポートフォリオですね。

総合診療医のコア・コンピテンシーを形成するであろう評価項目がこの3年間で1年ごとにどんどん変わってきている。教える側もそれに追いつくのに必死だし、今回、評価の方法が全く変わって、今のところ評価項目すら設ける予定がない状態です。委員会の中ではそれに対する何かしらのメリットがあって決まったんだと思うんですが、誰がどんな意思決定プロセスで、どんなメリットがあってその決定が降りてきたのかが見えないし、その決定に僕達はあまり納得いっていない。
分からないことが多い中で決まっていく組織に対して、それを後輩たちに「大丈夫だよ」と言って勧めることは出来ない。「委員会の透明性」があるということが組織として正常なのではないかと思っています。

コメントでは「専攻医が不安になる研修はシステムとしては未熟なのではないか」・「評価の指標が不明確であるので、改善して欲しいです」・「比較的新しい学会、新しい組織だからこそ、健全でイノベーティブな未来を作れると思っています。応援しています。」など沢山のご意見が寄せられました。
 
新専門医制度とは
総合診療専門医は2018年度から専門医機構により19番目の基本領域として新たに定められ、総合診療専門研修が始まった。
2017年度までの各学会によって定められた専門医研修が「旧制度」、2018年度以降の専門医機構によってつくられた専門医研修プログラムが「新専門医制度」と言われている。
 
コアコンピテンシーとは
所属するすべての人材に必要な行動特性のこと。
旧制度の総合診療専門研修(プライマリ・ケア専門研修)では18項目の評価項目が定められており、それらが総合診療専門医を総合診療専門医たらしめるコア・コンピテンシーであった。新専門医制度となった2018年度には20項目に増えたが、2019年度にはタイプAとタイプBの2つの評価方法が採択され、2020年度にはタイプBの7項目による評価方法のみに変更となった。
 
ポートフォリオとは
 専攻医が専門医研修の成果として提出するレポート。
症例報告では患者を中心において書くのに対し、ポートフォリオでは専攻医自身を中心におき、自分がその症例を通してどういう感情を抱き、何を考え、何を学んだのかを述べるものである。総合診療において患者と医師の関係は感情の伴った全人的なものであるという根本概念により、旧制度ではポートフォリオを提出することでコア・コンピテンシーと照らし合わせて評価されていた。新専門医制度ではポートフォリオの内容が大きく改定され、従来はA4二枚に必要な評価項目(18項目)を網羅する形で言語化することが求められたが、現在はタイプBの7項目に対して改定後の比較的自由な形式で述べることになった。これに対し、専攻医にとっては専門医取得が楽になったのでは、という見方もある。

現状の課題

高瀬先生
僕は総合診療医は地域住民に貢献出来るお医者さんであるといいなぁと思っています。
地域の人たちが分かりやすいような、ある程度具体的に「これが出来るお医者さんなんだ」と知っておいてほしいなと思います。
徳田先生

そうですね、地域の人たちに説明できないですもんね。
今、僕達がそもそも総合診療専門医って何なんだろうという疑問に立たされてしまっているから。

今まで学んできた土台だったり、自分の中で少しずつ総合診療医ってこういうものなんだって感じていたものが、自分の中で順番に無くなっていく感じがしていて、僕自身、総合診療医というものに対してアイデンティティクライシスというか、国は僕たちに何を求めているんだろうという不安は募りますね。

横田先生
総合診療医っていう形ですよね。

良くも悪くも、総合診療をされている方によって「総合診療のあり方」が違うじゃないですか。それぞれが持っている総合診療のあり方をぶつけ合った結果、「誰のための研修になってるんだろう」という感じはありますよね。それぞれが培ってきたものや正義はあると思うんですが、今後未来を作っていくであろう当事者である専攻医の意見が置き去りになっているのかなぁと思います。僕は研修要項の最低ラインが少し下がってきているのかなぁと思っていて、研修を終了すること自体は楽になるのかもしれないけれどそれは本当に専攻医のためになるのかなぁ、と疑問に思っています。

高瀬先生
資格を設けるからには質が担保されている、というのは大事ですよね。
彼らが誇りをもって「私たちは総合診療医です」と言えるのが大事だと思います。
徳田先生
少なくとも旧制度で研修を受けた僕や高瀬先生は、少なくともこれから自分で総合診療医としての道を歩んで行く第1歩を踏めたという自信を付けさせてもらえるプログラムだったなと思います。それを同じように後輩たちにも伝えていけたらなぁと思っていました。

旧制度がいい、新制度がいい、というものではなくて、やっぱり一番は「なんでそう変わったのか」というところが見えないといけないと思います。

総合診療医の未来とは

高瀬先生
僕は尊敬する先生が言っていた「総合診療医はカメレオン」という言葉が凄く心に響いています。私たちは総合診療医はカメレオンのように働く環境に合わせて自分を変えていけるお医者さんだと思います。

そうなんですが、私たち総合診療医が周囲の環境を読み取って自分の中の色を変えていく為には、いくつか手札が必要です。総合診療専門研修を進めていく上では、ある程度いくつかのフレームワークを習得してそれを言語化できるというのが、最低限必要なのかなぁと思っています。そこから先は各地域に合わせて、minimum requirementを包括しつつ、更にその上を行くお医者さんが増えればいいなぁと思っています。なのでやっぱり総合診療研修は質の担保が必要なのかなと思います。

徳田先生
そうですよね。研修を受けなくても長年、実地で総合診療をやっていらっしゃる人は沢山いますが、研修の魅力は3年間でその最低限を身につけられるということです。研修後の毎日って凄く楽しいですよね、これってこういう言葉で言い換えられるのか、と言語化の毎日です。

さらに、もう1つ僕が言いたいのは、僕は総合診療医もspecialistだと思っています。generalistかspecialistかでは分けられないくらい、総合診療はspecialistなんだよという立場や、そうやって胸を張っていけるような文化が、自分の中では総合診療医としての未来です。その為に僕達のスペシャリティをより認知しやすい形で言語化していかないといけないなぁと思っています。

あなたにとって、総合診療医とは?

 

高瀬先生
総合診療医というのは私にとってはカメレオンです。意識的に色を変えられるお医者さんになりたいなぁと思います。
楽しく前向きにやって行きたいですね!

横田先生
僕はやっぱり町のお医者さん、地域と共に生きる医師ですね。住民の皆さんもハッピーに暮らせるし、なんなら自分もハッピーに暮らしたいので、そこに合うのはやっぱり総合診療医なのかなと思っています。

徳田先生
僕にとっての総合診療医はspecialistだなと思います。総合診療医がスペシャリストだ、スペシャリティがしっかりあるんだ、ということが当たり前になっていくのが目指すべき未来だと思っています。

 

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