イベントレポート「令和時代のプライマリケア医とは?~都市・地方・海外~」

令和時代のプライマリケア医とは?~都市・地方・海外~ 

 いよいよ5月から、新しい元号「令和」がスタートし、カレンダーや免許証の表記が書き換えられたり、生活の様々な面で変化が目につくようになってきました。しかし、改元し新しい時代を迎えたといっても、高齢化は日々進行し、疾患が多様化・複雑化する流れは止まらず、総合的で多角的な医療へのニーズが高まっていくと思われます。そこで今回は、国際医療や地域医療の経験が豊富な3名の先生をゲストにお呼びし、日本の離島での僻地医療で必要とされるプライマリケア医の姿などをお話いただきました。

ご登壇いただいた先生方のご紹介

【齋藤学先生】
合同会社ゲネプロ代表
救急専門医

【志賀隆先生】
国際医療福祉大学医学部救急医学講座准教授
同大学三田病院救急部長

【金子惇先生】
浜松医科大学地域医療家庭講座 特任助教

金子先生「離島医療には全部が詰まっている!」

〇離島で働くってどんな感じ?

 みなさんは、離島医療と聞いてどんな医療を想像するだろうか?かの有名なDr.コトーを思い浮かべる方が多いのではないでしょうか。金子先生は、離島医療には医療のあらゆる面が詰まっていると考えています。

“金子先生:「自分のレベルが、その島の診療レベル。もちろん緊急の場合などは都市にいる先生方の助けもお借りするけれど、医師としてのしっかりしたスキルがないと、島の医療を支えることはできません。」”

高齢者から赤ちゃんまで年齢関係なく診察し、学校医をも務めていたそうです。

“金子先生:「『小医は病を癒し、中医は人を癒し、大医は国を癒す。』というけれど、離島医療では全部できます。」”

限られた資源の中、人材の中で伊平屋島の医療を支えてこられた金子先生のエピソードは、ぜひ一度離島で医師をしてみたいと思わせるものでした。

〇離島に行ったらキャリアはどうなるの?

 都市での最先端の医療から離れることになるので、行ったはいいけど、その後のキャリアが心配という若手医師も多くいます。しかし金子先生は、島だからこそできる研究に未来があると考えています。

“金子先生:
「島に一つしか診療所がなかったりするので、全数把握がしやすいこともあります。」
「沖縄では、各離島が合同でネットワークを形成し、Rural Health 等の研究を始めています。」“
 
離島だから、研究ができないというのは「平成」的な古い考えなのかも?!

〇令和時代の離島キャリア

 令和時代にはどんな離島医療が展開されていくのでしょうか?
金子先生は、離島医療、へき地医療をよりよくしていくためには、島で働く医師の気持ちが大事だと考えています。

“金子先生:「ポイントは、『義務』ではなく、へき地で診療するというプライドを持ち、やりがいや喜びを感じられる仕組みを作っていくことだと思います。」”

金子先生が働かれている静岡でも、へき地医療を担う医師の教育システム「へき地医療+家庭医療学修士コンバインドフェローシップ」に参加する医師を募集し、2020年から開始される予定とのことです。
静岡で離島医療、へき地医療を担いたいという熱い思いのある先生方は、ぜひ金子先生、またはAntaaまで!!

志賀先生「ジプシーと呼ばれた医師」

〇どうしたらへき地・離島医療がうまく行くのか

 志賀先生は、「2人法」「給与」「NP」がへき地・離島医療成功へのカギだと考えています。

“志賀先生:「医師二人の交代制で診療を行うと、都会と地域を頻繁に行き来できるようになり、より魅力的な職場になるでしょう。その旅費等を給与に上乗せ出来たらなおよいと思います。」

ご存じの方も多いとは思うが、NP(Nurse Practitioner;診療看護師)は、看護職でありながら、より医師に近い医療行為を行える国認定の看護師のことです。そのNPの存在が今後のへき地・離島医療には必要だと志賀先生は考えています。

“志賀先生:「NPさんたちの中には、離島で働きたいって人が結構いるようです。」”

夜勤をすることがなくなってしまううえに、都会の病院にも増した仕事の質が求められます。給料面での問題を乗り越えられれば、これ以上強い医師の味方はいないのではないでしょうか。

〇成功の反対は?

 成功の反対は何でしょうか?「成功とは1%のひらめきと、99%の努力」とはあまりにも有名なエジソンの言葉であり、成功の定義について考えたことのある方は少なくないと思います。しかし成功の反対となると、途端に難しいですね。挑戦?失敗?
志賀先生は、成功の反対とは行動を起こさないことだと考えます。

“志賀先生:「成功の反対とは、何もしないことです。」”

 行動力が凄まじく、多くの挑戦をし、結果を残してこられた志賀先生の言葉には迫力すら感じられました。この言葉にもきっとへき地・離島医療成功へのヒントが込められているのでしょう!

齋藤先生「Dr.コトー“ズ”の時代が来ている!」

〇令和時代のへき地・離島医療に必要なもの

 これからの時代のへき地・離島医療にはなにが必要なのだろうか?モノ?人?
齋藤先生は4つの「適切」な条件が必要だと考えています。

“斎藤先生: これから必要なのは『Right Person』『Right Time』『Right Skill』『Right Place』だと思います。“

〇Right Person

 適切な医師、とはいったいどんな医師でしょうか?
齋藤先生は、レジリエンスフレキシビリティーを持った医師が必要だと考えています。

“齋藤先生:「んーって頑張る、踏ん張る力(レジリエンス)も必要ですし、一方で口笛を吹きながら進んでく柔軟さ、明るさ(フレキシビリティー)も必要です。」”

そして、一人の医師ではなく、グループで診なければ支えていけないことも指摘されています。そしてAntaaの可能性についても触れていただきました。

“齋藤先生:「一人で診る時代は終わり。Dr.コトーではなく、Dr.コトー”ズ”の時代が来ています。」
「Antaaがへき地・離島医療に参入していくのはとても面白いし、いい意味でかき混ぜることになるでしょう。」“

〇Right Skill

 レジリエンスとフレキシビリティーを持った医師は、どんなスキルをもっていていることが求められるのでしょうか。
齋藤先生は、オーストラリア全土にある病院で採用されている、診療範囲を6段階のレベルに分けて定義したCSCF(Clinical Service Capability Framework)を例に、その土地土地で必要な診療があることを指摘されています。

“齋藤先生:「例えば、島ではCTは必要不可欠ではない。その場所で必要不可欠な医療を考え提供する必要があります。」”

また、齋藤先生は適切なスキルを得ることのできる仕組みも必要であると考えています。

“齋藤先生:「へき地にいながらにして、へき地医療専門医の資格が取れるようなスキームを実現したいと思っています。」”

〇Right Time, Right Place

 へき地医療に関心があっても、いつどこで方向転換するのが適切なのかわからない。そんな先生もいることと思います。
齋藤先生は、適切な時期はあり、適切な場所があると考えています。

“齋藤先生:「まだ子供が小さかったり、親御さんが元気で介護の問題がない時期。もしくは専門医の資格を取った後、自信がついたから力試しで挑戦してみるというのも大いにありだと思います。」

      「海がいいのか、山がいいのか。考えるよりも、実際に足を運んで、自分の目で見て肌で感じて、フィーリングを大事にしてほしいです。」

〇離島・へき地に医療をつなぐ「GENEPRO」

 齋藤先生が代表を務められている合同会社ゲネプロでは、離島やへき地、海外や途上国での医療に携わりたいという夢を持った先生方のために様々なプログラムを開催されています。まずは合同会社ゲネプロ公式サイトをご覧になってみてはいかがでしょうか?

ワークショップ「与えられた予算で、離島の医療の改善策を考案せよ」

 〇WS「与えられた予算で、離島の医療の改善策を考案せよ!」

 先生方のお話の後、島根県海士町の町長をはじめとした皆様を含め、今回のイベント参加者全員が参加してワークショップを開催しました。

 テーマは「与えられた予算で、離島の医療の改善策を考案せよ」

 予算は「①100億円②100万円③100円」ということで、5~6人のグループを3つ作り、各グループに金子先生、志賀先生、齋藤先生がリーダーとして入っていただき、10分という制限時間の中で、議論を交わしました。

 齋藤先生率いる100億円チームは、ふんだんな予算を生かし、教育制度・設備を整え「島民全体を医療従事者にする」という大胆な案を提案されました。

 志賀先生率いる100円チームは、予算がほぼゼロということで、NPO設立を心に秘めたお茶会を手弁当で開き、できることからやっていくという堅実な案。

 金子先生率いる100万円チームは、現在島の医療を担う医師への追加手当や、新たな医療従事者を島に呼ぶための広告費に充てるといった現実的な案を提案されました。

 今後の離島医療に一つでも生かされていくことを願います。

多くの知見が得られました!!

「令和時代のプライマリケア医とは?」と銘打って開催された今回のイベント。お話いただいたどの先生もこのテーマを難しく感じていらっしゃったようでしたが、それぞれの豊富な経験と知見から、Dr.コトーの時代は終わり、現状を打破するような教育システムが求められていること、複数名の医師・看護師・NPが団結したグループでの診療を行っていくことが必要なこと等、新たな視点を得ることができたと感じています。

海士町「島まるごと」診療所ツアー開催!!

〇海士町ってどんな島?どんな魅力があるの?

 海士町は、島根県から北およそ60kmの日本海に浮かぶ隠岐諸島の一つです。隠岐はその全域が国立公園に指定されるほどの豊かな自然に恵まれ、中でも海士町は、昔ながらの半農半漁の暮らしがいまでも続く島です。
 海士町は、いわがきや隠岐牛等のが素晴らしいのはもちろんのこと、海士町発祥の隠岐民謡「キンニャモニャ」や隠岐島前神楽など、伝統的な文化が今でもしっかりと継承されています。
 そしてなによりも素晴らしいのが島民の生き様です。「ないものはない」を町のスローガンに掲げ、島にあるものに磨きをかけながら、島らしい生き方や魅力を自分たちの手で作り上げるために様々な「挑戦」を続けています。
 合わせて海士町紹介動画もご覧ください! 

〇海士町の医療環境は?

 海士町に常勤される医師お2人が、行政や島外の専門医療機関と連携しながら、島民の健康を支えておられます。
 2010年、2017年には全島でMRI検査が行われました。また、診療所には新しいエコーやCTが整備されるなど、離島に居いながらにして充実した医療が提供されています。

〇海士町ツアーって何?

 今回海士町では、持続可能な離島医療の構築に向けた新たな挑戦を始めました。
 離島医療やへき地医療に興味はあるけれど、最初の一歩をどう踏み出していいかわからない。そんな医師である皆様のために、海士町の医療現場や島民との交流を通じて島の医療×地域を体験する短期ツアー“海士町の「島まるごと診療所」ツアー~課題先進地のプライマリケアを感じる旅~”を開催します。
 官民が一体となり、日本の課題先進地と呼ばれる離島の医療をよりよくするため、積極的に変化を起こしていこうという流れ、環境が整った海士町だからこそ、短期間でも多くの知見が得られること間違いなしです!
 参加人数が限られますので、参加されたい方はこちらからお早目にお申込みください!ページ下方に申し込みリンクあります。

〇関連リンク

海士町紹介動画
海士町の「島まるごと診療所」ツアー~課題先進地のプライマリケアを感じる旅~

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