【インタビュー】ケアとまちづくり、ときどきアート

2020年7月15日(水)に、ケアとまちづくり、ときどきアート出版記念講演をオンライン配信にて開催しました。当日は本には書かれていないことや、ディープなお話まで1時間にわたりご講演頂きました。

配信後、出演者の先生方にインタビューを行い、配信中には伺えなかった気になることを伺いました。地域で活動されている憧れの先生方はどのように考えていらっしゃるのでしょうか?

最後には医学生へのメッセージもいただいておりますので、ぜひご一読ください。

先生方の紹介

  

西智弘先生(川崎市立井田病院かわさき総合ケアセンター)

2005年北海道大学医学部卒。日本臨床腫瘍学会がん薬物療法専門医。室蘭日鋼記念病院で家庭医療を中心に初期研修後、川崎市立井田病院で総合内科/緩和ケアを研修。その後、2009年から栃木県立がんセンターにて腫瘍内科を研修。2012年から現職。抗がん剤治療を中心に、緩和ケアチームや在宅診療にも関わる。一方で、一般社団法人プラスケアを2017年に立ち上げ「暮らしの保健室」「社会的処方研究所」の運営を中心に、地域での活動に取り組む。著書に『社会的処方』(学芸出版社)など。

 

守本陽一先生(公立豊岡病院組合立出石医療センター総合診療科)

1993年神奈川県生まれ、兵庫県出身。家庭医療専攻医。学生時代から医療者が屋台を引いて街中を練り歩くYATAI CAFE(モバイル屋台 de 健康カフェ)や地域診断といったケアとまちづくりに関する活動を兵庫県但馬地域で行う。現在も専門研修の傍ら、活動を継続中。日本学生支援機構優秀学生顕彰優秀賞。ソトノバアワード2019審査員特別賞。

 

始めてまちでの活動を楽しいと思ったのはいつ?

ケアとまちづくりに関する活動をされている守本先生と、社会的処方を実践されている西先生、お二人の活動の根底には「まずは自分が楽しむことが大事」という共通のエッセンスがあるそうです。

それぞれの活動を「これ、楽しいな」って心から感じた瞬間はどんな時だったのでしょうか?

 

西先生

最初は、町のコミュニティカフェを借りて飯田病院のナースと一緒にやった「がん哲学カフェ」です。がん哲学外来をやっている樋野先生から「西くんもやりなよ~」って声かけられて、始めたのが一番初めだったんですよ。

がん哲学外来っていうのは自分たちで5000円払って、コミュニティカフェを借りるんですけど、それが自分たちにとってもすごく勉強になりました。がん哲学カフェでは、がんの方やそのご家族が来て、「自分はこういうことが辛いと思ってる」って言う話を聞かせてもらいます。それをナースと二人でやってるから「今の話、どう思った?」ってディスカッションができるんですよ。これが一人だったら「しんどかったなぁ」で終わると思うんですけど、二人でやるから後でちゃんと振り返りができます。それで自分たちのコミュニケーション能力がレベルアップしてくる。そういった意味での楽しさっていうのが一番初めですかね。守本くんが言ってるような楽しさ・面白さっていうのとはちょっと別なんですけど。

村田

それってお医者さんになってから何年目くらいの時ですか?
西先生

卒後7~8年目くらいの時です。

村田

それくらいの時に「あ、これ楽しいな」って思ったんですね。
守本先生はいかがですか?
守本先生

もともとは救急医志望だったんですが、地域のことをやろうと思ったのは医学部に入ってからです。学生の時に、県が主催する二泊三日の地域医療ワークショップみたいなのに参加したんですが、その内容が本当に薄くて、「自分がした方が絶対面白いじゃん。」って思ったんです。だから最初は使命感というか危機感から始めたんですけど、実際関わっていくと地元で色んな医療者ではない人と出会っていくということ自体が、凄く地元を見つめ返す良いきっかけになりました。そういう人たちと話してるのがワクワクした、みたいな感じですね。

村田
学生の頃からこういう活動をされてたんですね。西先生はもともとこういう活動に興味があった訳ではなかったんですか?
西先生

ん~、もともとは家庭医になろうと思ってたので、全く無縁ではなかったけど、「まちに出て活動をしてみよう!」って発想は全くなかったですね。診療所の中で患者さんを待っていればいいと思ってましたから。

村田

やっぱり樋野先生の「やってみなよ」って一言が大きかったんですかね。

西先生

そうですね、やっぱり大きかったです。「そう言うんだったら、じゃあやってみよっか」と思って始めました。

 

読者の皆さんも、誰かの一押しがあったから始められたことってありませんか?

どんなに雲の上のような先生でも、はじめは何かのきっかけや、誰かに背中を押してもらってスタートするものなんだと、そんな当たり前のことに気づかせてくださいました。

 

今までで一番苦労した経験はなんですか?

 
守本先生

その時を糧に!という感じなので、あまり身をもって「あのミスやばいなあ」というのはないですかね。その感情を引きずることはないかもしれない。ミスを何とか挽回できればなあ、みたいな気持ちでやってます。でも、健康教室を企画して、新聞紙にも出してもらったのに一人しか来なかったことがあります(笑)。その時も来たのは一人だったんですけど、その辺を歩いてる高校生を半ば無理やり誘ってきて、一緒にやりました。

 

西先生

僕は大きな失敗ってわけではないんですけど、自分の思考が問題解決型思考に戻っていくっていうのが毎年のように繰り返している失敗ですね。やっぱり医者なので、町の中に出て行くと、「この方向に問題があって、ここを医者として解決しよう」っていう頭になっちゃう。でも僕はコミュニティナースと一緒にやっているので、「それは医者の思考ですよ」って言ってくれて直してくれるから、「そうか俺が間違ってたな」って思います。

医者は「治す」ことにこだわる職業だからこそ、問題解決型の思考になりがちです。

しかし、まちにとって、そこに暮らす人々にとっては、問題解決することが単純に好ましいことではない場合もあります。そんな時、西先生のように身近にコミュニティーナースやストップをかけてくれる医者以外の人がいてくれると、解決すべきことと、そのままでいいことのバランスが取りやすくなると思います。

まちでの活動って医学的には…?

私も地元和歌山でまちに出て活動したことがあり、その時に感じたことをパイオニアである先生方にぶつけてみました。病院の外に出て活動している医師・医学生の中には同じことを考えたことがある人もいるのではないでしょうか?

村田
地域で活動する時に、やっぱりこれでいいのかなって焦る事ってあると思うんですね。例えば私が月に一回カフェで地域の人にコーヒーをおごるとして、「私これでいいのかな」とか「なんか効果あるのかな」とか。効果が目に見えて分かりにくいからこそ焦ると思うんですが、先生方はどうして、自分のやっている活動がしっかりケアやまちづくりに繋がってるんだって自信を持てるんですか?

 

守本先生

僕はでも結構焦っていたタイプの学生だったのですごい気持ちは分かるし、そういう生き急いでる感のある学生さんを見ると「あー自分もこうだったな」って思うんです。でもどう解決していったかと言うと、やっぱりなんか焦る時期ってあると思うんですよ。ただ、そこまでの間に小さい成功体験って絶対あって…僕の場合だったら、地域診断をやって参加してくれた人たちが楽しいって言ってくれたりとか、屋台を出して自分が楽しかったり、いろんな人と繋がっていく過程が楽しかったりとかもそうだし。そういう小さい成功を糧にしながらやってきました。

あと同じ方向を向いてる、同じ年代ぐらいの仲間がいると、すごい楽でしたね。今はSHIPっていうコミュニティに入っていて、同年代の看護師の男の子と仲良くなったりして刺激をもらっています。

 

西先生

やっぱり焦るといいことないですよ。

僕は緩和ケア医なので、死に行く人達を山のように見てるんですね。その中には社会の問題によって幸福な最期を迎えられない人が結構いたりして…例えば貧困の問題であったりとか。世の中にいるとそういう問題は山のように見るわけですよ。その中で自分のやってる暮らしの保健室であったり、まちの中に出てケアの活動をしていたりすることはあまりにも微々たるものであって、それが社会を劇的に変えてるっていう意識はそもそもないです。そのギャップに焦ると手っ取り早く問題解決しよう、大きな力を出してやらなきゃっていう気持ちになる。するとコミュニティナースから「まあまあ」って言われるわけです(笑)。

多分、社会をいきなりガラッと変えようとか、大きな力を持って何とかしてやろうっていうのはやっぱり歪みが生じるし、いいことないです。自分がまちの中に入って、ちょんってつついたら、社会という大きな玉の進む方向が1度変わったなってくらいの感覚です。それがたとえば20年30年たったら最初に進んでいた道よりは、ちょっといい方向に行ってて「そうだよなあ!」くらいの感覚なんだと思います。それでいいんだなって思えるのが大事。

1年2年とかのスパンで見ちゃうと、「いやーこれ俺がやってることって結局自己満足なんだろうか」とか、「そうは言っても病院に運ばれてくる人は苦しんでるからこれじゃダメだ」っていう焦りとの行ったり来たりで、それは苦しみます。

 

村田
自分のやってる活動を論文で示したいなーと思っても、地域の活動って医学で示せるものではなかったりもして…そこは求め過ぎずに活動を粛々と行うのがいいんですかね。
西先生

僕はそう思ってますよ。

守本先生

アカデミアとの上手い兼ね合いを取ってるいるのは、井階先生とかじゃないですかね。

 

西先生

そうですね、ただ発表していくっていうことは大事ですよ。活動報告していくとかそれを数字で評価できるんだったら、評価していくっていうのは大事。

でもケアのことを数字で評価していくっていうのは結構危険なところがあって、数字で評価することを目的にしちゃうと、その数値を良くするための活動になってしまう。数字は見た目ではわかりやすいけど、決してそれが街の中でのケア活動のアウトカムではない。そういう視点で見てもいいけどこれが本質ではないなって思いながらやらないと、変な方向に行っちゃうと思う。

村田
なるほど。焦らず、見失わず、コツコツやっていこうと思います。

この活動をやってて良かったな、と思った出来事は?

 

西先生

暮らしの保健室とかの活動に参加してた人で、癌が絶対に再発するって言われていた人がいます。最初の頃は再発するのが怖い怖いってずっと言ってたんだけども、ある時から「私、もう癌になってもいいって思えるようになりました。」って言ったんですよ。なんでそう思うようになったのか聞くと「癌になってもこれだけ自分を支えてくれる人がいて、何かあったらこの人たちに相談できるっていう仲間がいるから、もう大丈夫だと思う。」って。それを聞いた時、こうやって癌が再発するかもしれなくても、「大丈夫」って思えるようになってくれたことって凄いことだなと感じて、この活動しててよかったなぁと思いました。

 

守本先生

本当にやっててよかったなぁと思った出来事は2つあって、1つは屋台を始めて2年目くらいの時、メディアで屋台の活動を知った子供とお母さんが来てくれたことです。その子は障害があって、少し不登校になってたみたいなんですけど、屋台に行ってみたいって思ってくれて、外に出てきてくれたのが嬉しかったですね。もう1つは、公立病院で働いていた看護師さんです。公立病院なので、本当は町に出て活動したくても、なかなか出来なかったんだけど、屋台の活動に顔を出してくれるようになって、今は転職して看護付き小規模多機能で働きながら、カフェをやったりしています。そういうのを見ていると、屋台の活動が直接影響したかは分からないけど、なんかその人の人生がいい方向に進んだんじゃないかなぁって思うんですよね。他の医療従事者がやりにくいことでも、医者がやることが大事だと思います。医者がやってるから文句は言えないというか、医者が盾になれたらと思います。

村田
盾となり、ほかの医療従事者の活躍の場を広げられるような医者ってとってもかっこいいですね。

 

若手医師・医学生にメッセージ

 
西先生

とりあえず町の中で楽しいことやってみたらいいよ。それで失敗したり、上手くいったり、やっていくうちになるようになるから。

自分で立ち上げたるのがハードル高かったら、まちの中でやってる色んな活動に顔出してみたらいいと思います!

 

守本先生

学生は「スーパーマリオのスター状態」なので、なにやってもいい。

それこそ、Antaaに出演してる先生に「先生のところに行ってもいいですか」って言ったら、絶対にオッケーって言ってくれるだろうし、今だと色んなプログラムも沢山あるし、絶対に学生の時ってできることが沢山あるので、もちろん医学部の中の部活も選択肢の1つかもしれないけど、一歩踏み出してやりたいことがあるんだったら、それが社会人になってからできるかは分からないので、やりたいことやってみたらいいと思います。もし、地域に出たいとか、健康格差に興味がある人がいたら、お声掛けいただいたら力になりたいと思います。

 

今回、西先生と守本先生の活動を始めるきっかけから、考え方やスタンスまで知ることができ、とても参考になりました。とても気さくにお話してくださる先生方なので、ぜひ直接お話を聞いてみたい方は、SNS等から連絡してみてください。

 

最後になりましたが、西先生、守本先生、貴重なお話を聞かせて頂き、ありがとうございました!

 

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