CTで偶然認めた横隔膜周辺の石灰化. どのように考え, 対処すればよいのでしょうか.
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ここではCT画像所見を含めて、胸腔内の石灰化の機序、鑑別疾患(結核・膿胸・出血・肺梗塞)、胸膜プラークについて、またアスベスト関連疾患も解説します。
聖路加国際病院 呼吸器センター 呼吸器内科 次富 亮輔
胸腔内の石灰化は長期的な炎症によって起こります.
何らかの理由で胸膜に炎症が起こると炎症細胞浸潤やその後の線維化によって一時的に胸膜が肥厚し, その後時間の経過とともに吸収され元に戻りますが, その炎症が長期間になると炎症と組織修復の過程でDystrophic calcificationと呼ばれる石灰化を起こす事があります.
胸膜に長期的な炎症を起こす疾患としては[keikou]結核性胸膜炎が最も代表的[/keikou]です.
その他, 一般的な膿胸で改善に時間を要した場合や外傷による胸腔内の出血・肺梗塞でも同様の病態は起こり得ます.
ただし結核性胸膜炎に関しては, 石灰化のみであれば あくまで陳旧性の病態を指した所見であり結核性胸膜炎が現在アクティブに存在することを示すものではありませんので病的な意義としては小さいです. (もちろん片側の胸水貯留や炎症反応上昇など結核性胸膜炎を疑う所見を伴っている場合は精査が必要です.)
<図1. 陳旧性の結核性胸膜炎による胸膜の石灰化>
そのほか, 特に今回のように横隔膜面に石灰化を認める場合には『胸膜プラーク』の可能性を鑑別に入れて病歴を確認しましょう.
胸膜プラーク〜アスベスト(石綿)関連疾患〜
胸膜プラークは壁側胸膜の限局性胸膜肥厚を指し, アスベスト(石綿)関連疾患の存在を疑う所見です.
アスベストの吸入から15-30年という長い時間を経て発症します. 胸膜プラークで見られる石灰化は通常両側です.
分布は下肺野縦隔側や横隔膜面に好発し, 肺尖部やCP-angleには起こりにくいことが特徴です. 慢性炎症によって起こる石灰化は片側である場合が多く, また通常は臓側胸膜に発生します. 石灰化の分布が鑑別のポイントになります.
<図2. アスベスト吸入による胸膜プラークの石灰化>
石灰化を伴わない場合もあり, この場合は胸部単純写真では指摘できないことが多いです.
アスベスト関連疾患〜中皮腫、肺癌、石綿肺〜
アスベスト吸入による健康障害のひとつで, 中皮腫・アスベスト吸入による肺癌・石綿肺(アスベスト―シス)・びまん性胸膜肥厚などがあります.
疾患によって条件がありますが, 石綿健康被害救済制度の対象となる場合があります.
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参考文献
1) Radiographics. 1994 Nov;14(6):1247-61.
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