アカデミア前編:伊藤先生「開業ではなく、起業がしたい!」

  • 2020年8月30日
  • 診断
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多店舗展開や、病院経営のリアル

今回のAntaaアカデミアでは、3人の先生にご登壇いただきました。今までのAntaaアカデミアでは、クリニックの開業について多く触れてきましたが、今回は「多店舗展開」や「病院経営」についてのお話ということで、今までとやや違った毛色の勉強会となりました。3人の先生方が、なぜこのような形で開業、起業したのか、どのような困難があったのか、経営のリアルはどのような感じなのか、本当にたくさんのエピソードをお話しいただきました。前・中・後編の3編の編成ですので最後までお読みください。
※中編はこちら!梅岡先生「分院展開のカギは仕組化と教育!」
※後編はこちら!北城先生「病院経営は、みんな違ってみんないい」

今回のアカデミアでご登壇いただいた先生方の紹介

・伊藤 俊一郎 先生(アグリグループ代表)

・梅岡 比俊 先生(医療法人梅華会グループ 理事長、開業医コミュニティ M.A.F(医療活性化連盟) 主宰)

・北城 雅照 先生(医療法人社団新潮会 理事長)

伊藤俊一郎先生の紹介

1人目の登壇者は伊藤先生でした。伊藤先生は5年前に在宅医療専門のクリニックをスタートし、その後は多店舗経営に尽力なされています。現在は「遠隔医療」として、医療相談アプリの開発にも力を入れてらっしゃいます。

【伊藤 俊一郎 先生(アグリグループ代表)】

開業ではなく、起業したい!

伊藤先生は初めから開業ではなく、起業をしたいと思ってたとのこと。企業について勉強されてると「スタートアップ」という言葉に出会いました。

スタートアップとはPaul Graham氏によると「早く成長することを意図して作られた会社」のこと。そして、このスタートアップという言葉の定義には様々なことが言われている中、唯一欠かせないキーワードは「成長」であるそう。

どうやって起業する?

では、どのような方法で会社を立ち上げ、大きくするのかということが問題になってきますが、伊藤先生は「今までにないソリューションを持ち、社会問題の解決を行うこと。つまり、新たな価値を生み出すことが大切」とお考えになられました。

これを医療の世界でやるにはどうしたらいいのでしょうか。

伊藤先生

”実は日本の医療の問題というのは根深いです。

例えば、高齢者のたらいまわしホスピタルなのにホスピタリティがない
そして医師の過重労働増え続ける日本の医療費。これらの問題がもう何十年も解決されずに放っておかれています。

これは、私自身、遠隔医療を始めて再認識したのですが、病院を作りすぎたのに対して、医師の数が少ないことによって、いつのまにか医師の役割が「病院で働くこと」になってしまったことによると考えています。
医師法には実は病院で働けなんて一つも書いていません。書いてあるのは、「国民の健康な生活を確保する」ということです。

ですから、医師の働く場所はもっともっと広くて良いのではないでしょうか?

 

 

HARD THINGSに立ち向かうために狂人になれますか?

みなさんは「HARD THINGS」という本を知っていますか?

ベン・ホロウィッツという方が書いた本で、起業とは「答えがない難問と困難にどう立ち向かうか」であり、決してEASYではないと謳っている本です。実際に起業後の会社の生存率は一説では10年後には5%ともいわれています。単一クリニック経営に限っては、おそらくこの話は当てはまりませんが、自ら起業し150人を超える従業員を雇っている伊藤先生は、従業員が多くなっていくごとに経営が難しくなり、いいことばかりではなく、不条理なことも多くなってくるとおっしゃいます。

そんなHARD THINGSな世界に自ら飛び込む伊藤先生は、起業においてもう一つ大事な要素があるとおっしゃいました。

それは「狂うこと」です。

伊藤先生
伊藤先生:
”起業をすると本当に様々なことが起こります。

「医療相談アプリは医師法違反なんじゃない?」だとか、「個人でそんなに借金して大丈夫なの?」だとか言われたり。従業員が多くなっていくと不条理なことも多く起こるようになります。

起業って、答えがない難問と困難にどう立ち向かうかだと思っていて、そんな難問に立ち向かうには狂ってないとだめですね。

ちなみに、伊藤先生は具体的にどのような逆境にぶつかってきたのでしょうか。共有していただきました!

いきなり破産!?

最初はログハウスづくりのの老人ホームを作りたかった伊藤先生。国産の木材を使うと補助金が下りると聞き、まずは土地を購入されたそう。しかし、土地の購入後に補助金が下りないことになり、融資も打ち切られてしまいました。

抗議の電話

なんとか頑張って融資が下りたあとも困難は次々と伊藤先生に降りかかりました。伊藤先生と意見が対立する方から抗議の電話が毎晩のようにかかってきたそうです。

看護部長との対立

その後も困難は続きます。従業員の看護部長の方と、仕事のことで口論になったところ、翌日になんとその看護部長の方が翌日に退職してしまったのです。看護師の皆さんをまとめられないかもしれないとヒヤヒヤしたそうです。

どうやって解決したのか

そのほかにも、返戻金関連でもめたり、SNS採用に失敗して叩かれたりと困難は続きました。

しかし、伊藤先生はすべてのトラブルを何とか乗り越えてきました。それができたのは伊藤先生が耐え続けたこと、行動したことも大いにありますが、先生自身は、信頼できる弁護士の先生に顧問として助けて頂いたことがとても大切だったとおっしゃいます。トラブルが発生したら、逐一顧問弁護士の先生に相談していたそうです。法的トラブルのプロが身近にいるととても心強いですね。

また、トラブル続きに聞こえますが、悪いことばかりというわけではないです。というのも、去年、医療相談アプリで地域の保健衛生の向上に貢献したと、茨城県で表彰されたそうで、こうして人に褒められるというのはこのときが初めてだったそうです。

何をテーマに起業したのか?

今まで日本の医療と言ったら、外来と入院の二つでした。しかし、最近では第3の医療として「在宅医療」が流行り始め、ようやく市民権を得始めました。そして、伊藤先生はさらに新しい医療として、「遠隔医療」もあるとおっしゃいます。そして、この新しい2つの医療が世に広がらないと、医師が病院でしか働けない環境はなくならず、日本の医療はだめになってしまうかもしれないそうです。

しかし、現在、日本では病院が多すぎるという問題に対して、病院を減らしていく政策がとられはじめています。その代わり、在宅医療や、介護施設への移行を図るということですね。しかし、現状として、在宅医療をはじめとする高齢者介護の基盤はまだまだ未熟です。この状態のままベッド数が減ると、救急車がうまく機能しなくなったりといったような問題が発生し、高齢者医療はボロボロになっていくでしょう。

そのようなことを考えた結果、伊藤先生は「高齢者医療、介護」の分野での起業を決意しました。

具体的にはログハウスづくりのデザイナーズ老人ホームを作ったり、古民家をリフォームしてクリニックにしたり、デイケアを提供したりという活動をしています。

在宅医療の現状とメドアグリケアグループの特徴

前述のような状況ですが、それでも日本で在宅医療をする医療機関の数は頭打ちになってきています。なぜかというと、やはり24時間の往診体制を用意するのが厳しいからという理由が一番多いです。

そんな中メドアグリケアグループは、地方を中心とした展開で順調に数を伸ばしています

メドアグリケアグループの特徴は、他にもあり、その代表に、看護師を多めに雇い、「医師の仕事を出来る限りタスクシフト」していることもその代表です。たとえば、カルテは医療秘書が打ち込むことにしたりしています。また、常勤医の先生は夜勤をなしにして、夜勤は非常勤の方と夜勤の看護師の皆さんを中心に展開したりすることで、働きやすい職場づくりにし、医師を集め、24時間体制を整えています。

また、現場のアイディアを優先することもしています。看護師さんたちのアイディアでミャンマーに人道的支援を開始したのですが、僕に与えられた仕事ではなく、自分たちで考えて提案した仕事だと、職員もいきいき働くということが目に見えてわかりました。

なぜ拠点を増やすのですか?

伊藤先生は起業して今年で5年たちますが、今でも拠点を増やすことに熱意を持っていらっしゃいます。その理由は、熱意の根源は何なのでしょうか?

伊藤先生
”実はお金は個人開業していた時の方が稼げていました。というのもあり、今は世の中に在宅医療を行き届かせ得るために拠点を増やしています。在宅医療が届いていない人はまだ大勢いますからね。いつでも。どこでも。誰にでも。最高の医療をあなたのもとに。というメドアグリケアグループのスローガンもそういうところからきています。

具体的には関東の千葉や茨城をメインに展開していますが、5月に新潟の糸魚川にも新しくオープンしました。地元の糸魚川で大火事が起きたとき、地元のために何かできないかと考え、糸魚川市長に相談したところ、「在宅医療を糸魚川にも作ってほしい」と言われたことがきっかけです。採算度外視の計画になってしまいましたが、なんとか地元に貢献出来たらなと思います。”

お金を大切に

みなさんはお金は好きですか?こうして聞くと堂々と答えられない…という方もいらっしゃると思いますが、伊藤先生はお金が大好きだそうです。さらに、職員の方々にも、お金を好きになるように常々おっしゃっているらしいです。

というのも、お金とは価値のあるものです。感謝の証とも言えます。医療従事者はどうしても、お金のためじゃない!という感じになってしまいますが、これはホスピタリティを出せない原因になると伊藤先生は考えます。お金は自分のサービスで世の中が良くなった証であるから、しっかりお金を好きでいた方が良いとのことです。

その一環として、伊藤先生は職員に営業成績をすべてオープンにしていらっしゃいます。利益が増えれば、ボーナスを増やしたりして、自分たちのサービスが世の中に価値を残したというのを実感してもらう、という取り組みをしています。

残った利益も、公益資本主義に基づき、地域や社会に投資することもしています。

医療相談アプリについて

伊藤先生によると、医療相談アプリは医師の働く場をスマートフォンにも拡張する存在だそうです。

伊藤先生
ちゃんと機能するか不安でしたが、結果として、外来よりもいい満足度をいただきました。この調子でさらにどんどん医師の働く場を拡張出来たらなと思いますし、医療アプリはそのためのカギとなる存在になると思います。
 

会場からの質問コーナー

現在、臨床医としてと経営者としての配分はどれくらいですか?理想はどれくらいですか?

伊藤先生
現在は、クリニック事業に関してはほぼ100%が経営者としてです。臨床医としては、医師会の休日当番だとか、時々夜に呼ばれるくらいですね。時間配分も、今はアプリ事業に熱を入れていて、週6日はアプリ事業で、クリニックに関しては週1日の配分です。

実は僕にとってはこれが理想の配分です。というのも、もともとは背中で引っ張るタイプのリーダーとして仕事をしていたのですが、そうすると、怒っちゃうことが多くなっちゃうんです。熱くなりすぎちゃうんですね。これは良くないなと気づいてからは、あえて現場から一歩離れたところで冷静になるように気を付けているんです。

 

経営者として絶対にやると決めていることを教えてください。

伊藤先生
絶対やるぞっていうのは、諦めないことです。僕が諦めたらすべて終わりなので。

絶対やらないぞっていうのは、従業員とトラブルを起こすことですね。

 

 起業して初日の自分に伝えたい一言はなんですか?

伊藤先生
僕は初めは、スタッフに気に入られるようにと顔色ばかり窺っていました。そのため結局、「友達関係」を経営に持ち込んでしまったんですね。これは経営に苦労する代表パターンだと後からいろんな本を読んでしりました。ですから、「あまりスタッフから嫌われても気に掛けずにね。」と伝えたいです。嫌われても、その人たちの生活が支えられていれば、それでいいかなと。

スタッフに楽させようとしすぎると、チーム全体として機能しなくなってしまい、地域にも迷惑をかけますしね。小さな善と大きな善の使い分けです

 
 
 

Antaa アカデミアとは?

翌日からすぐに活用できる武器を手に入れよう。

Antaaアカデミアは2020年よりAntaaアカデミア supported by MEDIVAとして開催します。

 

経営やマネジメントにおいて、翌日からすぐに活用できる実践的なノウハウや考え方を身につけることを第一のねらいとして考えています。

部下への指導や目標の与え方、チームとしての課題が発生した際のアプローチ、中長期的なビジョンやミッションの立て方、またリーダーとして組織を盛り上げ・発展させられるような考え方/スキル/ノウハウ等を一つ一つご紹介していきます。

講義の構成内容

講義にあたっては、事前に課題図書と簡単な事前課題を課し、講義当日はもう一歩踏み込んだテーマの理解を講義とディスカッションで実施します。 
毎回、簡単かつ実践的な事後課題を出しますので、それを翌日から現場で実践していただくことで、本当の意味で参加者の血肉となる理解に繋がることを目指します。
また課題図書については、是非一読いただくことを期待していますが、多忙で時間が取れなかった方のために、毎回の講義においても簡単なあらすじと書籍のポイント紹介を実施します。

 

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