2020年8月7日金曜日、清水 徹先生(長野県立こども病院小児外科)にご登壇いただき、「海外臨床留学への道〜アメリカだけが道じゃない〜」というタイトルでオンライン配信を行い、海外臨床留学への道の拓き方やアフリカでの医療の現状などをお話いただきました。
配信後に清水先生へインタビューを行いました。
清水徹先生 プロフィール
東京都三鷹市出身。慶應義塾大学法学部卒業後、経営コンサルティング会社に就職。
その後、琉球大学医学部に学士編入学。沖縄県立南部医療センター・こども医療センターで初期研修。
在沖縄米国海軍病院で1年のインターンを経験。
札幌・手稲渓仁会病院で外科後期研修、沖縄県立南部医療センター・こども医療センターで小児外科・救急研修。
2016年9月から2017年10月 南アフリカ・ケープタウン Red Cross War Memorial Children’s hospitalで小児外科フェローとして勤務。その後アフリカ諸国(マラウィ、ルワンダ、ガーナ、シエラレオネ)を周り、2018年2月からオーストラリア・シドニー Children’s Hospital at Westmeadで小児外科フェローとして勤務。
2019年4月より現職。
海外臨床留学の一番のメリット

そうですね。人との出会いというのもそうなのですが…
僕の場合、日本と海外、それも複数の医療機関に勤務し、さまざまなシチュエーションで臨床経験をつむことが出来たことで、医療って、正解は1つじゃないと実感しました。
1つの病院や1つの国にずっといると、どうしてもそこでの常識にとらわれて、「これはもうこういうものなんだ」という枠の中で考えてしまいがちです。
しかし、ちょっと国を出てみると、日本では当たり前だったことが海外では否定されたり、逆に海外で当たり前に行われていることが日本で行われていなかったり…ケープタウンも日本もシドニーも、医療のレベルはいずれも高い国ではありますが、国ごとにやっていることが異なる場合があります。
結局、医療はひとつの視点から捉えるのではなく、多角的な視野を持つことがとても大事だと思っています。
↓配信中は多角的な視野を養うまでの一つ一つの経験について、写真や図を使用しながら分かりやすく教えてくださいました!


小児外科は相手が子供なので、先天性疾患など、とてもバラエティが豊富です。
同じ症例がないというくらい違うのですが、そこで求められることは、やはり応用力だと思います。
教科書に書いてあることだけをやれば、うまく手術が出来る!ということにはなりません。
全く見たこともない景色や知らないことが出てきた時に、「分かりません。できませんでした。手術を途中で辞めます。」というわけにいかないじゃないですか。
なんとかその手術を完結して、責任をもって閉創しなければなりません。
そこで求められる応用力を身につけるためには、いろいろな角度・切り口を持って医療を学ぶことが大切だと思っています。
臨機応変に対応できるためには、引き出しの多さが医者としての力かなとも思っていて、様々な視点を持つ重要性を知るきっかけを与えてくれたことが、僕が海外で働いてよかったなと思うところですね。


日本に帰ってきてからは、「これは今の症例の参考になるな」と思う論文を見つけたときは、メールで配信して共有しています。

培われたコミュニケーション能力
配信では「国際学会のレセプションなどで積極的に話しかけ、自ら臨床留学のルートを獲得してきました」と仰っており、とてもコミュニケーションに長けていらっしゃる清水先生。
その秘訣をインタビューでさらに深く教えて頂きました。


こうやって人と話すことも好きですし、僕はもともと外資系のコンサルティング会社でサラリーマンをやっていたので、その時に教わったのかもしれません。
ビジネスは、1人ではできません。
そんな中で、タイムマネジメントやグループワーク、リーダー論などの重要なスキルを学びました。
会社を辞めてから琉球大学の医学部に編入学しました。
僕の経験をなんらかの形でまわりの人や社会に還元したい、ビジネスで教わったスキルを医療の場で発揮したい、と考えてやってきました。

先生は海外の方とのコミュニケーションも上手だと思いますが、英語の勉強はどのようにされましたか?
医療英語は時間を見つけて勉強しているのですが、日常会話の勉強方法がわからなくて…

日常的に英会話の機会をなるべく作る努力が必要です。オンライン英会話の先生を探すときは、英語を第一言語とするネイティブの先生をお勧めします。
外国人が周りにいる環境だったら、積極的に一緒に食事に行くなどして、仲良くしたらいいと思います!
臨床留学の動機と準備


ただ、人と違うことをするときに、いろいろ言われることはあります。
たとえば、「日本人は手術がうまいのに、わざわざ世界に行って学ぶことないんじゃないか」など。
僕は昔から海外に行きたいと思っていたので、何を言われても取っ払って前に進んでいました。
実際行ってみて、すごくいい経験をさせてもらったなと思います。

臨床留学したいと思ってからすぐに飛び立てるわけではないと思いますが、医者人生の中でどのタイミングで臨床留学をするのがベストだと思いますか?

アメリカにレジデントとして行くなら、日本での臨床経験は必須ではないです。しかし、他の国々では即戦力として期待されるので、自分の専門領域のある程度の経験は必要と思います。
でも海外に出るのはタイミングが命なので、ここぞという時が来たら行ける準備をしておくことが大事だと思います。
医師医学生へメッセージ!
最後に、海外臨床留学へ興味がある医師医学生に向けて、メッセージをいただきました!

日本人医師として海外に行く壁はあまりにも高い、とみんな思っていますが、実はそれほど高くない。
日本人の医者は実力もあるし、頭も良い。
そういう優秀な人たちが、活躍できる場所は世界にたくさんあると思います。
しかし英語力や職場のしがらみなど、様々な理由で、海外に行きたくても行けない人がたくさんいます。
僕はそういう人の「海外への壁」を低くしたい、何らかの形で自分のできることをしたいという思いがあります。

ありがとうございました!!

おまけ-ブログについて


ケープタウンでの仕事の様子を書いています。
興味のある方はぜひ読んでみてください。
現場の判断を助ける医師同士の質問解決プラットフォーム「AntaaQA」
「外来で、専門外の症状の診断に不安がある。経過観察をしようか迷う」
「当直で、レントゲンで骨折を疑ったが、読影に不安がある。他に人を呼ぶべきか判断に迷う」
そんな時、AntaaQAでいつでも即相談することができます。
第一線を走る医師たち・同じ悩みをもつ医師に質問ができ、判断に迷ってたあなたの悩みを解決に導く、医師同士の質問解決プラットフォームです。
コメント - Comments -
コメントは公開されません。