研修医・医学生必見!行動が“つながり”を生み、キャリアを拓く【総合診療医・青木信也先生インタビュー】

2020年9月14日(月)に「ERGP(総合診療医)が語る!キャリアと未来」と題し、塩田病院総合診療科 部長の青木信也先生にAntaaにてオンラインレクチャーをいただきました。


松前町(北海道)、上五島(長崎県)、喜界島(鹿児島県)、伊良部島(沖縄県)での離島・へき地医療、
“Rural Generalist”発祥の地オーストラリアでの研修など稀有な経験を積んでこられた青木先生。配信後インタビューでは、現在までのキャリアを築くきっかけとなった“人とのつながり”と、そのための行動の大切さ、転機となった患者さんとの出会いなどを語っていただきました
最後には医学生・研修医へのメッセージもいただいています。ぜひご覧ください!

青木信也先生 プロフィール

青木信也先生

塩田病院 総合診療科 部長
2007年 滋賀医科大学卒業
2007年〜 湘南鎌倉総合病院 初期研修(ベストレジデント賞)
2009年〜 湘南鎌倉総合病院 救急総合診療部 後期研修
2012年〜 湘南鎌倉総合病院 救急総合診療部チーフレジデント
2013年〜 北海道松前町立松前病院 内科医長
2017年〜 長崎県上五島病院 外科(GENEPROプログラム)
2018年4月〜6月 オーストラリア クィーンズランド州 rural generalist 研修(ACRRM)(GENEPROプログラム)
2018年〜 現職 

救急専門医、プライマリケア連合学会認定指導医

つながりがキャリアを「つなぐ」 〜研修病院の選択から離島・へき地医療まで〜

Antaa編集部
早速ですが、今回のオンライン配信で用いられたスライドについてお伺いしたいです。

最初のリハーサル時に送ってくださったものと比べ、本番では「人との出会い」に焦点を当てられたスライドになっているなと感じました。ご自身の経歴を振り返ってみて、人との出会い・つながりから受けた影響はどのようなものでしたか?

青木先生
自分のこれまでの経歴が異質だからなのか、研修医や学生によくキャリアのことを相談されます。ですが経歴について話すことはよくあっても、今回みたいにスライドにする機会はありませんでした。

スライドから、つながりを大切にされてきたことがとても伝わってきました。

青木先生
ただ、今回スライドを作ってみて「客観的に見て、面白くないな」と感じました。自己紹介だけで淡々と経歴を話している感じがして、上手く伝わらないなと。

悩んだ挙句に父親にどうしたら面白い話になるだろうかと相談したところ、「何を選んだかではなく、どうしてそれを選んだのか」を話した方が面白いのじゃないかと言われ、「すっきりとして」作り直しました。

Antaa編集部
そういった経緯があったんですね。
青木先生
学生時代に見学に行った湘南鎌倉総合病院で、僕のロールモデルとなる太田凡(ぼん)先生に出会いました。湘南鎌倉総合病院は忙しいとは聞いていましたが、太田先生のもとで働きたいと思い、滋賀医大卒業後、はるばる神奈川の湘南鎌倉総合病院に飛び込みました。

その後、初期研修の地域研修で北海道の函館に行きました。そのとき、先輩に紹介していただいた松前町立松前病院に3日間見学に行きました。函館から2時間ぐらいの、当時携帯の電波が届かないようなところにある病院です。

そこでのファーストインプレッションがとても強く、その後もつながりがずっと続いて、松前病院の木村眞司先生のもとでご指導をいただくとともに、力試しをしようと思い北海道に渡りました。

先ほどのオンラインレクチャーで紹介したGENEPROを選んだのも、木村先生から「オーストラリアの rural GP(General Practitionar)が勢いがあって面白いことやってるよ」と聞いていたからです。

GENEPROとは:
「日本版 離島・へき地で闘える医師となる」ことを目的とした研修プログラム。
“Rural Generalist” 発祥の地オーストラリアでも研修を行う。

青木先生
ちなみにGENEPROを創設された齋藤学先生とは、鹿児島県の徳之島の病院でお会いしたことがあるんです。このような経緯もあってGENEPROに参加したので、つながりが自分の行動にともなって付いてきたというのが自分の中での振り返りですね。

「やりたいこと」を声に出して道を切り拓く

Antaa編集部
先生のお話を聞いていて、地域の研修病院などで尊敬する先生に出会い、その出会いが後年“つながり”になることは素晴らしいことだなと感じました。

一方で、人とのつながりを得るためには自分から積極的にコミュニケーションを取って、能動的に動くことが大事だと思います。つながりを築く上で青木先生が大事にされていることはありますか?

青木先生
自分が興味あることをされている先生には、名刺をいただいたらすぐに連絡をしています

そのとき、「自分はこういうことをしたいが、周りにそういう人がいない」とか「先生みたいに進むにはどうしたらいいですか?」「分岐点で今悩んでいます」と、相談するように心がけています。

地域で働いておられる先生方は、大学病院の先生と比べると後輩医師から仕事やキャリアの相談を受ける機会があまりないのかもしれません。めずらしいからなのか、相談すると先生方はいつも快くアドバイスをくださいます。

そこの地域で働いている先生がいいなと思ったら、「自分が将来何をやりたいか」、「自分はこいうことやりたい」というのを声に出すことも心がけていました。

そうして声に出すことで周りに引っ張ってきてもらった、と感じています。

Antaa編集部
そのためには、自分の考えやビジョンをしっかり持つ必要がありますね。
青木先生
あった方がいいかなと僕は思います。

例えば田舎で働こうとしたとき、働き方や考えについていろいろなベクトルを持った人がいます。この人たちのベクトルは、いろんな方向と長さ(大きさ)を持っています。まったく同じ方向を向いている人も少なからずいますが、大半は少し自分のベクトルとは向きが異なっています。

少しずつ違う方向を向いていたとしても、逆方向を向いていない限り、それらを足し合わせれば自分のベクトル方向にプラスになります。そこには新しい発見なども含まれているはずです。

なので自分とは考えがちょっと違うなと思っても、その人から得るものは沢山あるはずです。そういう人の話を沢山聞いてディスカッションするのも、いいかもしれないですね。

配信内のオーストラリアでの研修のスライドからは、
たくさんの同僚との和気あいあいとした雰囲気が伝わってきました!

3人の患者さんが転機をくれた

Antaa編集部
医師同士でのつながりについてお聞きしましたが、診察する上で患者さんとの関わりもたくさんあるかと思います。その中で印象に残っている患者さんとのつながりを教えていただけますか?
青木先生
大勢いますね。その中でも自分の転機となった患者さんが3人います。

1人目は初期研修2年目のときの患者さんです。外科のローテーション中で3年目以上のスタッフが皆んな手術に入っていて、病棟には後輩と僕しかいませんでした。

そうしたらさっきまで元気だった患者さんが、呼吸停止寸前になってしまい、挿管をしないと助からない状況になりました。でも先輩はおらず、僕も挿管の自信がなく
「いま僕が助けられなかったら、この患者さんは助からない」という極限のストレスでした。

でもこのときに初めて挿管が上手くいき、その患者さんは無事に助かりました。その後、奥さんからも感謝のお言葉をいただき、退院後に年賀状のやりとりをするようになりました。

それから3年後に、たまたま近くを通り家まで挨拶に行きました。元気になっている姿を見て、「人を救うというのはこういうことなんだな」と感じたのが、忘れられない患者さんの1人です。

Antaa編集部
数年後に元気な姿を見せてもらえるのは嬉しいですね。
青木先生
2人目は北海道のときに出会った、尿路感染症の敗血症でガタガタと震えながら来た年配の男性です。

「抗生剤の点滴だけで大丈夫かな」と思っていたのですが呼吸が悪くなってきました。ですが周りのスタッフが挿管に慣れておらず、研修医と一緒に挿管し、3日後に抜管し元気に帰宅いただくことができました。

横浜で看護師をしていたその娘さんが「こんな田舎でも、普通の医療を受けられてとってもありがたいです」と言ってくれて、救急をやっていて良かったと感じました。

初期研修時代に見学に訪れ、2013年より勤務した松前病院

青木先生
3人目の患者さんは、集中治療の勉強に行ったときです。

産後出血でお母さんが亡くなり、お子さんが助かった症例がありました。その2日後に、別の産後出血があり、そのときは母子ともに助かりました。母親が亡くなってしまった症例と母子ともに助かった症例を1週間で経験したのです。

産科はハッピーに生まれてくると普通は思われているけれども、どうしても亡くなってしまうことがある産科救急は、これまで自分が経験した救急とは重みが違いました。

なので総合診療をやっていて、予防や慢性期疾患のコントロール、看取りなども当然大切なのですが、「お産」「子供」「外傷」の3つは何がなんでも助けないといけないと思っています。

自ら行動しなければ、視野は広がらない

Antaa編集部
新型コロナウイルスの影響で実習ができなかったりと、これから科を考えたい医学生にとって大変な時期だと感じます。

まだ科を決められなかったり、未来を具体的に考えられない学生に対して、視野を広げるためのアドバイスをいただけますか?

青木先生
自分で行動するのが1番大切だと思います。自分が学生のときになぜ「大学の研修ではだめだ」と思ったかというと、大学病院がスーパーローテーションにまだ慣れていないだろうと考えたからです。

当時、スーパーローテーションが4年上の代から始まったばかりで、地域で働く医者を育てるプログラムが大学にあるだろうかと考えました。また「全身を診る」ということを考えると、血液内科の先生が消化器内科も診ているなぐらいのイメージしかありませんでした。救急もガチンコ救急しかなかったので、大学は何か違うなと。

改めてネットで「スーパーローテーション」と調べると、聖路加病院と沖縄県立中部病院と湘南鎌倉総合病院しか出てきませんでした。それで湘南鎌倉のホームページを見てみると、なんだかアツいことが書いてあり、ちょっと見てみようと思い見学に行ったのが最初の行動でした。

そのときも周りからは「なんで4年生の早い段階で」と言われました。ですがまず西医体に出ることもあり、5年では行けないと思ったのと、ポリクリが始まる前に一度外病院を見たほうが、「自分の大学の初期研修医」と「外病院の研修医」の姿を比較できると考えました。

Antaa編集部
たしかに一度外を見ると視点も変わりそうですね。
青木先生
4年生のときだけでなく、6年生のときにもう一度見学に行きました。ポリクリを終えた6年生で見ても、やはり衝撃がありました。それで初期研修は絶対に湘南鎌倉にしようと決めたんですよね。

だから、行動するのが1番だと思います。

情報ツールは当時よりも今の方があります。Webで様々なことを検索できるので、後はどう行動に移すかですね。

知識はつながり、パンっと増える

Antaa編集部
研修医の先生は、ある程度進みたい科も決まっていて、自分はこうなりたいというビジョンがあるかと思います。

そんな研修医の先生方に、「これだけは伝えたい」と思うことはありますか?

青木先生
よく研修医の先生に言うのは、自分が進みたい科以外の科をまわるのはその時しかないので、科が決まっている人ほど違う科をちゃんとまわった方がいいということです。
Antaa編集部
外科に行きたい人はちゃんと内科もまわれという感じですね。
青木先生
はい。「糖尿病のコントロールが・・・」とか「血圧が・・・」と言って、何でもかんでも内科に相談する外科医は信用できませんよね。(笑)

それより、これから何十年も外科をやるのであれば、内科の勉強は2年間だけはしっかりやった方がいいです。初期研修って24ヶ月しかないので。

Antaa編集部
私は今医学部の4年生なのですが、勉強していても、全部がつながっていて、そこが医学の楽しいところでもあるのですが、量が多くて勉強が大変だと思ってしまうこともあります。(笑)
青木先生
本当に日々勉強ですからね。でもずっとわからないなと思っていても、ある日全部がつながって、パンっと一気に知識量が増えることがあります。パンパンっと階段状に上がっていきます。
Antaa編集部
まだ見えていないので頑張ります!

今まで卒後のキャリアに対して漠然とした考えしか持てていませんでしたが、先生のお話を伺って、自分からもっと行動してみようと思いました。

青木先生、今日はどうもありがとうございました!

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