富山県南砺(なんと)市から家庭医療のウェーブを!【大浦誠先生配信後インタビュー】

今年8月、Antaaでは南砺(なんと)市民病院の大浦誠先生にご登壇いただき「病院家庭医によるマルモと誤嚥性肺炎へのアプローチ」と題したオンライン配信を行いました。慢性疾患を多く併存してる患者さんへのアプローチの方法を、基本的な理論から“マルモの四則演算”の考え方、さらに実症例ベースでの実践まで、45分間のレクチャーをいただきました。 ※マルモ:Multimorbidity(多疾患併存)

さらに配信後に特別インタビューの機会をいただき、大浦先生の家庭医としてのこれまでの歩み、ブログで医学情報の発信を続けておられる理由、南砺市民病院の今後の展望などについて伺いました。インタビュアーは配信に引き続き、一宮西病院の白神真乃先生です。上記の配信アーカイブ・スライドと合わせて是非ご覧ください!

大浦誠先生プロフィール

大浦誠先生

南砺市民病院 内科・総合診療科医長
2009年 福井大学医学部卒業
2011年 南砺市民病院にて初期研修修了。
2014年 とやまNANTO-RENKEI総合診療医養成プログラム修了
2015年 家庭医療専門医取得
2016年 臨床倫理認定士取得
2018年 総合内科専門医取得

患者さんへの“包括的アプローチ”の確立〜荒幡昌久先生との出会い〜

白神先生
大浦先生は、これまで総合診療医としてどのようなキャリアを築かれてきたのですか?

大浦先生
私は自身の総合診療としてのキャリアをよく「クランボルツの偶発性理論(※1)」になぞらえるのですが、その時々の出会いによって、自分のSpecail Interestやサブスペシャリティが決まってきているところがあります。
※1:ジョン・D・クランボルツ博士によって提唱された、「個人のキャリアの8割は予想しない偶発的なことによって決定される。」という理論。
大浦先生
例えば初期研修をしている時、臨床推論に力を入れている指導医の先生の下について「あ、自分は臨床推論をしっかりやる総合診療医になるのかな?」って思っていました。

その後に家庭医療を始めたのは、嚥下や褥瘡などに関する委員会の仕事がどんどん入ってきて「どうせ自分の病院でそういう仕事をするなら、ちゃんとしたものをやろう」と思ったのがきっかけです。

また、生まれ育った南砺市にある南砺市民病院の初期臨床研修プログラム・とやまNANTO-RENKEI総合診療医養成プログラムの融通の効くところ・興味のあることをなんでもさせてもらえるところに惹かれたというのも動機の一つです。

ちょうどその時の指導医だった荒幡昌久先生(現・南砺市民病院 臨床教育・研究センター長)が終末期医療や誤嚥性肺炎・摂食嚥下障害の研究をされていました。

荒幡先生は「市中病院でも臨床研究を行い、しっかり論文の形にする」というスタイルの先生だったので、田舎の小病院でも臨床研究の指導を受けることができる恵まれた環境でした。

この荒幡先生との出会いがきっかけで、誤嚥性肺炎の患者さんや誤嚥して食べられなくなった患者さんへの対応を包括的に行うというスタイルが芽生えて来たのだと思います。

「マルチモビディティ」の概念は、多くの先生とのつながりから生まれた

 

白神先生
なるほど、では先生が配信でお話しくださった「マルチモビディティ」の考え方の発端は何だったのでしょうか?
大浦先生

今お話しした経緯で、患者さんの終末期の限界の線引きを見極め、少しでも食事出来る人を増やそうという研究をしていたので、その目標は個人的には達成できました。

実際に包括的介入のエビデンスを臨床に活かしているのですが、そうするとどうしても介入が多くなりがちなんですね。そして介入が多くなると患者さんによっては「この薬はもう飲めません。」とか「これ以上は処方不可能です」とか、必ずどこかで限界が来ます。

また、このような治療をいつまでもし続けるわけにもいかないのですが、どうしても医師の間でも治療中止の判断に違いが生じていました。例えば、「食べられない」と終末期の判断をする基準や、その時に胃瘻や中心静脈栄養をどのように勧めているか、患者さんの家族からの意見とのジレンマをどう解決するかなども医師の考えかたが反映されるところでした。

このような状況の中、「臨床倫理委員会」が院内で立ち上がり、私もその委員会と、実際の問題解決のための「臨床倫理コンサルテーションチーム」に所属していました。

このチームは、例えば主治医が患者さんの胃瘻造設をするべきか否かで倫理的判断に迷う場合に「その胃瘻造設は倫理的に適切な情報を元に検討されているか」といった事項を検討し、主治医をサポートします。

この倫理委員会での患者さんへのアプローチの経験が基となって生まれたのが、、マルチモビディティにおける「足し算と引き算」の考え方です。

さらに私は、マルチモビディティの掛け算と割り算の概念も同様に存在するのではないかと考えました。

家庭医は治療方針を決める時に、その患者さんを取り巻く生活環境や家族関係をうまく活用できないかを考えることがあります。そして、システム理論の視点でより小さい介入で大きな効果を生み出せるところがないかを探ります。一見すると問題点が多く見えても、その因果関係が明確であれば、まとめて一つの問題になるかもしれませんし、全体像が捉えやすくなるでしょう。

ちなみに、「プロブレムリストが縦に長過ぎるから減らそうよ!」というのが割り算の発想の基でしたが、この考え方は佐藤健太先生・矢吹先生・マツケン先生(※2)とお話ししている間に偶然生まれたのです。

※2:佐藤健太先生(勤医協札幌病院 総合診療科 科長)・矢吹拓先生(栃木医療センター 内科医長)・松本謙太郎先生(国立病院機構大阪医療センター 総合診療科)

大浦先生

なのでマルチモビディティというのは、僕一人のアイデアではなく、多くの先生方とのつながりによって生まれたアイデアなんです。

余談ですが、マルチモビディティを「マルモ」と略して使っていますが,マツケン先生とご飯食べている時にキャッチーな名前はないかという話になり、マルモという名前が挙がったのがきっかけです。自分一人であれこれ考えていても決して浮かばなかったと思います。

更に青木拓也先生(※3)の論文のおかげで“マルモパターン”いう単語がそこに当てはまりました。

▶Takuya Aoki, et al. Multimorbidity patterns in relation to polypharmacy and dosage frequency: a nationwide, cross-sectional study in a Japanese population. Sci Rep. 2018 Feb 28;8(1):3806.  [PMID: 29491441]

そこで青木先生にお礼の連絡を差し上げたところ、「実地の先生にその知見をたくさん使ってもらってなんぼだと思ってる。使ってもらえるなら本望です」と言っていただきました。まさかマルモパターンが実臨床のプロブレムリストで応用されるとは先生も思ってもいなかったそうで、些か感心していただきましたね。

※3:青木拓也先生(東京慈恵会医科大学 総合医科学研究センター 臨床疫学研究部

患者さんの家族の状況を知るための時間は「3分間」

白神先生
先生が普段の診療でマルモパターンを実践する際のこだわりをお聞かせください。
大浦先生

私はこのマルモに介入する時間は3分間と決めています 。

アメリカで行われたDOPC(Direct Observation of Primary Care)研究によると、一般内科の先生の外来と家庭医療の先生の外来では、後者の外来の方が一人の患者さんに費やす時間が3分間長いそうです。

▶Robin S, et al. Involving patients in medical decisions: what happens in real-world practice? Fam Pract Manag. 2001 Sep;8(8):50-51. [PMID: 11574976]

Stange, K.C. et al. “Illuminating the ‘Black Box’: A Description of 4454 Patient Visits to 138 Family Physician.” J Fam Pract. 1998 May;46(5):377-89. [PMID: 9597995 ]

家庭医の先生はこの3分間で予防医学のことや禁煙指導、あるいは15秒の世間話をすると。そして何と、この15秒間の世間話が、患者さんの満足感に影響を与えるのだそうです。

だから私の場合は、「患者さんの家族の状況を知るための時間」を3分間に設定しています。

 例えばパーキンソン病の患者さんがマルチモビディティの状態と分かった場合、 「お薬は何飲んでますか?」と訪ねたり、家族の方に杖を持っているかどうかを尋ねたり、 「ケアマネージャーさんはおられますか?」と尋ねたりすれば、その方のマルモの情報収集はオッケーです。

あるいは救急科の先生がマルモに関する事柄をカルテに記録しておくことで、一般内科医の先生がハッと気づき、かかりつけの先生と相談し、「今後のフォローの方針をちょっと変えてみようかな?」という展開になったりですとか、そのようなひと手間を加えるだけで家庭医療学的な救急医療が実践できると思います。 

皆さん、そのようなことは無意識で普段からされてるとは思うんですけど、これを概念として提唱することに意味があるんじゃないかなと思っています。

なぜ、一病院家庭医がブログ・SNS発信を続けるのか

白神先生
そうした“マルモ”の発信をはじめ、先生は普段ご自身のブログやSNSで医学論文の要約など様々な医学情報を発信されていますね。どのような狙いがあるのでしょうか?
大浦先生
今、私はブログの形で発信しまくっていますが、これは自分が興味のある情報(最近はマルモ)を、いち早く多くの人に知ってもらいたいと思っていて、その中で興味を持ってくれる人や、実践してくれる方と繋がることが目的です。

▶大浦先生のブログ『南砺の病院家庭医が勉強記録を始めました』

マーケティング論の一つに「イノベーター理論」というものがあります。これは新商品や新サービスが世の中に普及する過程を5つに分ける考えかたです。

具体的には、新しいモノがでたら良し悪し考えずに真っ先に飛びつくイノベーター(革新者)。流行に敏感で自ら情報収集を行って判断するアーリーアダプター(初期採用者)。 新しいモノに比較的慎重ですが、全体平均よりは早く取り入れるアーリーマジョリティ(前期追随者)。大多数の人が取り入れた後に採用するレイトマジョリティ(後期追随者)。流行に関心が薄く、一般的に普及してようやく取り入れるラガード(遅滞者)と言われています。

ですから私の役割は、イノベータ理論におけるイノベーターやアーリーアダプターのようなもので、まだ世に広がっていない概念を広げるお手伝いをすることなのかなと思います。

そのような「研究のネタを誰かに渡してしまう」というのは研究が好きな人たちには勿体ないことのようにも見えるんですけれども、むしろ研究な得意な先生に新しい概念をお伝えすることで新たな研究が生まれるのであればこの上ない喜びです。

あと、これもブログの目的なのですが、話題提供を通じて多くの先生との出会いが生まれたりしてるんです。

例えば青木先生のような普通ならなかなかコンタクトを取れないような先生から、ブログに書いた瞬間にコメントを頂けたり、東京女子医大の教授になられた若林先生(※4)も僕のブログに反応して、それがきっかけで終末期肺炎についての書籍に記事を書いてくださいました。

※4:若林秀隆先生(東京女子医科大学病院 リハビリテーション科教授)

大浦先生
なので、私のブログが発端でいろんな人とつながったり、そこから新しい概念が生まれたりしているかもしれないですよね。マツケン先生に教えてもらったんですけど、このような布教の役割をしている人をIT業界では「エバンジェリスト」って呼ぶらしいです。
白神先生
確かに先生は普段、先生が今一番研究しておられることを発信されていますね。
大浦先生

時間を掛けて研究成果を出せる先生方はもちろん素晴らしいのですが、私の中ではそういう先生たちと研究で切磋琢磨するというよりは、「今こういう研究始まってるんだけど、面白くない?」と積極的に発信した方が、刺激を受けた人たちが同時にいろいろな視点での研究を始めてくれると思うんですよね。

なのでブログ取り扱う論文は、すでに多くの研究者がいそうな領域ではなく、あまり世の中で研究されていないけれども色々なジャンルの方が興味を持ってくれそうなものを意識しています。

例えばリハビリ医学の中にオステオサルコペニアという分野がありますが、その概念を家庭医の先生が知ったら、「じゃあ、これを外来で診るにはどうしたらいいだろう?」という視点が生まれてきます。

あるいはマルモの考え方が好きな先生は「じゃあこれは、マルモでいうどのパターンに当てはまるんだろう?」って考えたりしますし、他職種の医療スタッフの人が「おー、リハビリ医学って面白いなぁ」と思って見てくれたりします。

更に患者さんの立場からすると、明日からの診療に直結しますよね。

医療者がサルコペニアを意識することで、足が弱っている患者さんを診たらサルコペニアを疑って栄養や運動をお勧めするだけでなく骨粗鬆症を疑って問診やFRAXや骨密度の測定をしてみようかなという発想になり、その結果骨粗鬆症の診断がつくと早期介入が可能になる。

骨粗鬆症の介入は忘れられていることが多いので、それだけでも患者さんにとってはプラスになると思います。

このように私のブログを読んだ日本中の先生方が、患者さんのサルコペニアに気づいて骨粗鬆症を疑おうと意識するようになっていただければと思いますし、さらにそれが口コミで「こういうブログ記事があったよ!」っていうように広がってもらえればと思います。

因みに昨日で、サルコペニアの記事アクセスが1,000を超えました。

▶Osteosarcopeniaの疫学、診断、治療について

ブログ発信の狙いは”インフルエンサー”を巻き込むこと

白神先生
すごいですね!もうインフルエンサーですね。
大浦先生

医師の論文紹介のブログ記事が各施設で口コミで広まっていくと、面白い論文を日本中の人たちがたくさん見てくれると思うんです。

もちろん、先進的な論文は多くの人に読んでもらってなんぼだと思いますので、そういう論文を書くイノベーターと、それを世に広げるエバンジェリストがいれば医療が進歩する可能性は高まります。とにかく臨床に使えて面白そうなものをピックアップして、広げることが目指すところです。

その広げる手段としては、ブログ+SNSなのですが、とにかく広がるスピードが早いのが魅力です。面白そうな概念があれば、一気に関連論文をまとめて世に発信すると、論文や雑誌にするよりも圧倒的に早い。下手すれば1時間でできて、多くの方に読んでもらえるのです。

あまり知らない概念についてまとめることもあります。まとめ終わった頃には私自身も一丁前に語れるほどの知識を得ていますので非常に勉強になります。そして人に見せるためのブログができているので、人に見せて教えることで知識も定着して、SNSからその道の一流の方々からコメントを頂いて内容を深めることができます。海外の論文の著者からお礼をいただくこともありました。

もちろん査読がないと内容の妥当性に疑問がある方もいるでしょう。ですのでブログ記事に内容について個人的に気を遣っていることとしては、個人の感想をあんまり入れていません。論文の一部を切り取ることをせずに、そのままを引用して紹介しています。

一部だけ掻い摘んで「ここが大事です!」発信したとしても、「裏は取れてるの?」とか「バックグラウンドがよくわからない」とか言われると困るので、論文をまるまま出しています。

つまり私は論文のソムリエ的な役割、いわゆる「キュレーション」の役割を意識しています。更に、英語論文だと英語が苦手な人が読めないから、日本語に訳して紹介することでたくさんの人が読んでくれたりということも行っています。

考えてみると、学会が本来そういう役割を担っていますね。教育講演などで「新しくこういう概念が出ました」という発表がなされて、それを聴いた人が職場の同僚に持って帰るというケースです。

ブログはそのような学会の役割を担えるだけでなく、一度に多くの人が閲覧することができます。更に強みになる点としては、あるトピックについて発信がなされると、すぐにそれについての権威である先生が「これおすすめですよ!」と、“インフルエンサー”として加わってくださるので、質の担保も出来るという点です。

こうやってその分野の大家の先生がインフルエンサーとして加わってくださると、僕が押した小さなナッジが、案外大きな変化を生んでいるかもしれないんです。

もちろん紹介した論文が広がるということは、「ひょっとしたら、内容がおかしいのではないか?」という論文が広がってしまう可能性もありますよね。なので紹介する論文は非常に気を使いますし、専門家のコメントをいただいてすぐ内容を修正してアナウンスすることもあります。一人で論文を読んでインプットするよりも多くの学びもありますし、紹介する論文を選ぶ目も養われます。

臨床研究の機会に恵まれず「どうしようかなー」と悩んでいる先生方には、本気で研究したくなるまでちょっと一呼吸おいて自分がいつもインプットしていることをアウトプットするだけでも立派な医療への貢献になるのではないかなと思います。

もちろん私個人としては、研究の方も少しずつ詰めていって、アウトプットと研究の両輪で進めていこうと思っています。

医師のSNS発信は、病院のリクルートに活用できる

白神先生
先生はアウトプットの他に、もう一つSNSの活用法があると仰っていますね。
大浦先生

もう一つ言うと、自分がいつも発信の時に心がけていることはリクルートなんです。

私の所属する南砺市民病院は富山県の山のふもとにあって、白川郷とかがある白川村が車で約30分以内の場所なんです。非常にのどかで住みやすい場所です。宝島社の「住みたい田舎ランキング」では、2017年は全国第3位、2018年も全国第4位という評価もされています。

ですが、そもそも南砺(なんと)をどう読むのかもあまり知られていませんし、知名度がとても低いので、中身がどれだけ素晴らしくてもその魅力があまり伝わらないのはとても勿体ない。

そこでSNSなどで発信することによって、南砺市民病院の名前がちょっとでも広まってくれたらいいなと思っています。まずはここを読んでくださった方には、南砺の読み方と何県にあるのかぐらいでいいので知っていただければと思います

大浦先生

私のフォロワーには医学生の方も多いですけど、南砺市民病院に見学に行きたいですって言ってくれる学生さんが結構いらっしゃいます。

また、私のTwitterのプロフィールに色々な資格が書いているんですけども、「こういう資格はどうやって取れるんですか?」っていう素朴な疑問をいただくこともあります。さらに僕は実は所属を一度も変わったことがないんですけども、「医局に入っているんですか?それともフリーランスですか?」っていう疑問をもらったこともあります。

今回の配信で一番感じたのはAntaaの発信力の高さです。今回発表するにあたって、病院に見学に来てくれた学生さんに「今度Antaaで配信するんだよ」と言うと、「え、あのAntaaですか!」ってすごく驚かれたりしました。

だから最近はツイッターでもリクルートという面をすごく意識していて、フォロワー数がどこまで増えるのだろうかというのも気にしているところですが、せっかくフォローしていただいた方にはアカウントを制限を設けずに全てフォローを返したりもしています。

▶大浦先生のTwitter:@makotoura

実名でTwitterをしているのは私を世に知ってもらうというよりも、南砺市民病院に実際にいる人が発信しているという証明のためです。

ブログのタイトル「南砺の病院家庭医」にも南砺の名前を入れていますし、このぐらい露骨に関連付けて宣伝しないと南砺市民病院を知ってもらえないと思って広報活動に勤しんでいます。

総合診療の“南砺モデル”を、ここ富山から確立したい!

白神先生
南砺市民病院の総合診療の今後の展望をお聞かせください。
大浦先生

私の夢は、南砺市民病院が総合診療の一拠点となり、全国から先生が集まることです。多様な価値観を持つ医者が集まれば、この病院でしかできない新しいスタイルの総合診療医が生まれるのではないかなと思うんですよね。

家庭医療に詳しくて、臨床推論もできる等といった、ハイブリッド型の総合診療医が生まれたり、いろいろな専門を持つ先生が、得意技を活かしつつも総合診療を学びに来てくれるのも嬉しいですね。 

南砺市民病院で最近力を入れている取り組みの一つに、ドクターカーによるプレホスピタルへの介入があります。例えば癌の終末期の患者さんが自宅で心肺停止状態になっていたとして救急要請をしてしまうと、病院まで搬送されて心肺蘇生が行われてしまうかもしれません。

果たして搬送を行うのか、又はこの場でお看取りをするのか、という判断を適切に行い、搬送を適正化しようという取り組みです。もちろん迅速な治療が必要な場合にはドクターヘリとの協力も行いますので、終末期医療や救急医療の貴重な経験を積むことができます。

そして、我々総合診療医が救急医療の場に少しだけ守備範囲を広げることで、救急医の先生をサポートできるのではないかと思います。そのような救急の医療にも触れられ、更に臨床倫理の話もできる「在宅救急」を実践したいですね 。

多様なニーズに応えられる研修を提供しつつも、南砺市民病院でしか育成できない「南砺モデル」と言うべきものが構築できればいいなと思います。

そのモデルの中で、色々なバックグラウンドを持った医師が集まって、「自分はドクターカーに乗りたい」「自分は終末期医療をやりたい」「自分は摂食嚥下障害をやりたい」「在宅医療も病棟管理もやりたい」「将来は診療所を開きたい」など様々なニーズが集まることで、地域や時代に応じた新たな形の総合診療が実践できると考えています。

大浦先生

最後に。私にとってのつながりとは「刺激と癒し」です。

総合診療に限らず、これからの医学の学習スタイルは施設の枠を越えていかなければならないと思います。例えば自分の興味のある分野があるけど施設内に仲間がいないということはありませんか?

施設内で完結できるのは専門家が多数いる大きな病院で、特に小さい規模の病院では学習する仲間もいないかもしれません。

ですが、最近だとオンラインで全国各地から興味のある人達が集まって勉強しあうことができます。田舎の病院でコツコツ仕事をしているだけではお目にかかれない優秀な医師ともオンラインで交流することができるわけです。

このように医師としての見聞を広げることで刺激をもらい、話をするだけで明日からも仕事を頑張ろうと思えるような癒やされる仲間をつくっていければいいなと思います。

ありがとうございました。

――大浦先生のご活動、そして南砺市民病院の総合診療の今後一層のご発展を祈念いたしております。今回は貴重な配信及びインタビュー、誠にありがとうございました!(Antaa編集部)

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