イベントレポート【大阪】「令和時代のプライマリケア医とは?~都市・地方・海外~」

令和時代のプライマリケア医とは?~都市・地方・海外~ 

令和という新時代を迎え早4か月。安倍改造内閣に小泉進次郎氏が初入閣し、政界には早くも新しい風が吹いているようです。前回から御共催頂いている島根県海士町のスローガン「ないものはない」は進次郎氏が震災復興に向けてのスピーチで「もったいない」の次に世界に広めるべき、本質をついたものだと訴えられています!

医療の世界はどうでしょう?日々新しい技術、薬が研究・開発され、進歩し続けているなかで、正しい情報や本当に大事なものを掴むのが難しくなってきているのではないでしょうか。そこで今回は、前回豪華な講師陣にご登壇頂き大好評だったイベント「令和時代のプライマリケア医とは?」の第2弾 in 大阪!国際医療や地域医療の経験が豊富な3名の先生をゲストにお呼びし、日本の離島での僻地医療で必要とされるプライマリケア医の姿、プライマリケア医に必要な本質などをお話いただきました。

 

第一回はこちらからご覧ください!

ご登壇いただいた先生方のご紹介

【片岡仁美先生】
岡山大学大学院医歯薬総合研究科
地域医療人材育成講座
教授

【笹本浩平先生】
名張市立病院総合診療科医師

【大塚勇輝先生】
岡山大学病院
卒後臨床研修センター
研修医

笹本先生「地域でこそノンテクニカルスキルが生きる!」

〇「適度なシバリは必要!?」

 縛りばかりで生き辛い世の中だ。そう嘆いている先生方もいらっしゃるかもしれない。確かに日本社会には多くの縛り、制限が設けられています。自動車の速度制限を超えれば、覆面パトカーに取り締まられ、お小遣いを使いすぎれば奥様に取り締まられます。確かに生き辛い。しかし、笹本先生は、「適度なシバリがあるからこそ得られるものがある」と言います。

“笹本先生:地域、離島における医療は多くの縛りを抱えています検査器具や病床数等の施設の縛り。医療の担い手の縛りに、人材不足に起因する時間の縛り。これらの縛りは、マイナスの要素がある一方、「チームと個の研鑽」によって縛りを解決しようと努力するチャンスであり,スキルアップする絶好の機会なのです。」”

シバリを嘆くのは5秒間だけ!あとはポジティブに捉えて努力することが大事なんですね!

〇「本質の見極めが大切!」

 世の中には数多の選択肢が転がっています。あの参考書がいい、このオンライン講座がいいと聞き、思いつくことをいろいろしてみたはいいけど、結局どれも中途半端になり、思ったような結果をのこせなかった。大学受験でそんな経験をされた方もいるのではないでしょうか。医療の世界も同じ。様々な縛りがある中で、最善の医療を患者さんに提供するためには、本質を見極めることが大切だと笹本先生は言います。

“笹本先生:「彼を知り己を知れば百戦危うからず、という孫子の言葉のように、;自分の長所を客観視し、彼;相手の情報を見極めることが大切です。どちらか一方ではなく、両方を見極めることができれば、正しく本質を理解できます。

縛りの中いいるからこそ、本質をつくことがより大切になってくるということですね!

〇「学ぶとは?」

 本質を見抜き、縛りを解決するためには、「学び」が欠かせない要素であることは明白です。
しかしながら、学ぶこと自体が目的化してはいけない、と笹本先生は考えています。

“笹本先生:「目標を立てて学ぶのはいいが、目的なく資格ばかり求めたり、To Doリストをつくっただけで終わってしまってはいけない。」

日々進歩する医学を学び続けるのは、自分を頼ってくる患者さんを救うためです。その目的を忘れてはいけないということですね。
また、一口に学ぶといっても、本を読む、講義を受ける等、様々な方法が存在します。笹本先生は、インプットとアウトプットのバランスが重要だと説きます。

“笹本先生:「ラーニングピラミッドというものがあるが、人に教えることでアウトプットすることも大切です。初めから教えようとするのではなく、ネタを作り、ダメな部分をPDCAサイクルを回すことで改善して行くのがいいでしょう。」

 常に本質を見極めながら学び、実践していらっしゃる笹本先生のご著書「医学生・若手医師のための誰も教えてくれなかったノンテクニカルスキル」はこちらからご購入頂けます!

片岡先生「地域医療・プライマリケアに教育は欠かせない!」

〇「なぜ今地域医療なの?」

 ダヴィンチによる手術や、iPS細胞による再生医療等、医療が高度化し続けている今、なぜ地域医療が大切になってくるのでしょうか。地域枠制度の導入が大きな転機となった、と片岡先生は言います。

“片岡先生:昔は、「将来医者は余る」といわれていましたが、医師臨床研修制度が始まった2004年頃から医師不足が叫ばれはじめました。またマッチング制度がはじまり、地域出身者が大学卒業後、地元に戻らなくなったことも一因ですが複合的な要因があります。しかし、地域枠制度が導入され、地域医療にスポットライトが当たり始めています。」

〇「学生の教育は欠かせない!」

 いくら田畑が広く設備が整っていても、担い手がいなければ、田畑はすぐに荒廃してしまいます。同じように、地域医療も担い手となる医師がいなくては始まりません。そこで、学生のうちから教育をしていくことが大切だと、片岡先生は考えています。

“片岡先生:現在の医学部の実習は細分化された医療が提供される大学病院で始まることも多いでしょう。しかしこれは医療全体を俯瞰してみれば特殊な環境なのです。高度医療も大切ではありますが、患者さんのそばにある、患者さんにより近い医療、すなわちプライマリケアもまた大切なのです。心が柔らかい学生のうちから地域医療を体験し、地域の現場で学び、地域医療に貢献していく医師を養成していくことが求められています。」

都会を離れ、地域で人とのつながりの重要さを学ぶことは、良き医師になるには欠かせない要素ということですね。

〇「地域医療に対する日本、世界の取り組み」

 日本だけでなく、世界を見渡しても、地域医療に力を入れている大学、都市は少なくないようです。今回片岡先生に、日本は岡山大学、アメリカはトーマスジェファーソン大学の取り組みをご紹介頂きました。

“片岡先生:「岡山大学の「地域を支え地域を科学する総合診療医の育成」事業が、文部科学省未来医療研究人材養成拠点形成事業リサーチマインドを持った総合診療医の養成プランに平成25年から選定されました。臨床現場から臨床研究や質的研究を介してエビデンスを発信する研究者の育成の促進を実践います。」”

片岡先生ご自身も、岡山大学大学院医師薬学総合研究科地域医療人材育成講座教授として、臨床・研究の両輪を持ち合わせた医師の養成にご尽力されていらっしゃるようです。

“片岡先生:「米国トマスジェファーソン大学ではPSAP; Physician Shortage Area Programという家庭医を育成する教育プログラムが展開されています。このプログラムによって、地域で診療する家庭医の人数を大いに増加することができ、その成果はニューイングランドジャーナルにも掲載されています。」”

〇関連リンク:岡山大学「地域を支え地域を科学する総合診療委の育成」
米国トマスジェファーソン大学「PSAP; Physician Shortage Area Program

〇地域医療の魅力とは?

 最後に、地域医療に興味はあるけれど、一歩踏み出すのが難しいという方のために、片岡先生からメッセージを頂きました。

“片岡先生:地域医療といっても、それぞれの地域によって求められる医療は違ってきます。現場の中でどのようにニーズを汲み取って働いていくか考えながら、自分の力を幅広く横に伸ばせるという意味で、一生のうちで一度は地域医療を経験することは誰にとっても意味のある事だと思っています。」

トークセッション

 今回のトークセッションでは、令和時代のプライマリケア医に必要な学びや、教育に焦点を当てて、笹本先生、片岡先生にお話頂きました。お二人に加え、トークセッションからは、岡山大学研修医2年目の大塚先生にもご参加頂き、ご自身の経験も交えて、地域医療の魅力を語っていただきました。

ーーー笹本先生、片岡先生のお話をきいた感想は?

“大塚先生:「医師を志したときには、地域医療にはそこまで関心があったわけではありませんでした。しかし、医学生としての笠岡諸島での離島医療実習や、研修医として働くていくなかで、実際に地域の患者さんとお会いして、興味が湧いてきています。今後どのように地域医療とかかわっていけるかを考えていたところだったので、糧になるお話でした。」”

“中山先生:「学生時代に地域医療にかかわるのはすごく大事というお話しでした。僕自身も鹿児島大学時代に沖永良部島で離島実習を経験しましたが、外科の開業医の先生が一人でお産でもなんでも診るというのが印象的でした。研修医としていくと戦力として見られてしまうが、学生には実務的なこと以外にも色々なお話をしてくださるのも、学生時代に経験しておくべき理由の一つですね。」”

―――笹本先生は医者4年目として、研修医を指導することもあると思うが、どのように教えているのですか?

“笹本先生:「まずは、地域のニーズを取ってこいと言いますね。一人一人の患者さんに、街や生活のことを聞いていくことが大切なんです。」”

―――地域で働くにあたっては、その地域を知って、好きになることが大事なんでしょうか?

 

“大塚先生:「診療に来られた方をみて、その地域を知るということは確かにありますね。患者さんが慕ってくださると、その患者さんも、そして地域のことも好きになります」”

“片岡先生:「患者さんと接することによって芽生える絆があります。外来の最後に切なくなることもありますよ。」”

“笹本先生:「僕の場合は興味先行ですね。病院見学の時点でその地域に何があるのか探ってみてその土地の成り立ちを知ります。そのあとは実際に働いてみて、患者さんの話を聴いて興味が膨らんでいくんです。」”

―――学生時代に経験することが大切というお話でした。若い世代を代表して、大塚先生は医師としてのキャリアにどのような思いを抱いていますか?

“大塚先生:「若い世代は、漠然とした不安を抱えています。医局に所属しても、医局人として、まったく知らない土地に飛ばされてしまう可能性もあります。何が良さで、何が悪いのかわからない。人生設計を立てる段階にあるが故の不安というものは大きいですね。」”

―――若い世代は不安が多いということでしたが、医師としてのキャリアを歩んでいく中で、50代60代のベテランでも新しいことを学ぶことによって得られるものはあるでしょうか?

“片岡先生:「新しいことに挑戦するのが好きであることが大事だと思います。私自身も、総合診療科が新しく発足した際に別の医局から移った経験があります。若いときに不確定要素や選択肢が多いことで漠然とした不安を覚えるように、ベテランとしていい意味で安定してきた中で、新しいことに挑戦するのは不安を伴うと思います。私もベテランという域に入っていないのですが、一つ言えるのは、自分にもしチャンスがあれば新しいことにチャレンジしたいですね。」”

“笹本先生:「私は、数学科から医師に転身しました。その時には確かに不安はありました。でもそれって、RPGでいうとレベル40から新しい冒険を始めるイメージなんです。ある程度の下積みは終わってるから、自分の足りないところ、欲しいものが明確に分かってくるんです。もし人生設計を立てるなら、新しいことにチャレンジするスパンさえ決めておけば、第2,第3の自分が見えてきて、人生が豊かになると思います。」”

ワークショップ「与えられた予算で、離島医療の改善策を考案せよ」

〇WS「与えられた予算で、離島医療の改善策を考案せよ!」

第1回と同様に、先生方のお話の後、島根県海士町の皆様にもご参加頂き、今回のイベント参加者全員でワークショップを開催しました。

テーマは「与えられた予算で、離島医療の改善案を考案せよ!

予算は「①100億円②100円」ということで、5~6人のグループを2つ作り、各グループに片岡先生、笹井先生がリーダーとして入って頂き、10分という制限時間の中で議論を交わしました。

笹本先生率いる100億円チームは、その財力を生かし、病院やドクターヘリといったハードな面に投資をする一方で、宣伝・PR、そして教育にも力を入れて島外からの来訪者、移住者増を目指し、島自体を盛り上げる案を提案されました。

片岡先生、大塚先生率いる100円チームは、限られた予算の中で、キーとなる「人」という面に焦点を当て、クラウドファンディングで資金を得た後に、島民が安心・信頼して医療を受けられ、また医師・看護師の高齢化にも対処できる、医療者のローテーション制度を整備する案を提案されました。

今回生まれたものから、今後一つでも海士町をはじめとする離島医療に活かされていくことを願います。

今回も多くの学びが得られました!

「令和時代のプライマリケア医とは?」と銘打って開催されたイベントの第2回in大阪!

今回は関西地方でご活躍されている先生方に、地域で学びながら、医師として成長していき、その地域に貢献していくということについてお話を伺いました。プライマリケア医には、常に新しいことに挑戦するチャレンジングスピリッツ学び続け、またそれを実践していくバイタリティーが必要になってくることを教えて頂きました。

Antaaは今後もオンライン配信等を通して、様々な先生方の活動、学びを届けていきたいと思っております。(文:飯嶋俊也)

海士町「島まるごと」診療所ツアー開催!!

〇海士町ってどんな島?どんな魅力があるの?

 海士町は、島根県から北およそ60kmの日本海に浮かぶ隠岐諸島の一つです。隠岐はその全域が国立公園に指定されるほどの豊かな自然に恵まれ、中でも海士町は、昔ながらの半農半漁の暮らしがいまでも続く島です。
 海士町は、いわがきや隠岐牛等のが素晴らしいのはもちろんのこと、海士町発祥の隠岐民謡「キンニャモニャ」や隠岐島前神楽など、伝統的な文化が今でもしっかりと継承されています。
 そしてなによりも素晴らしいのが島民の生き様です。「ないものはない」を町のスローガンに掲げ、島にあるものに磨きをかけながら、島らしい生き方や魅力を自分たちの手で作り上げるために様々な「挑戦」を続けています。
 合わせて海士町紹介動画もご覧ください! 

〇海士町の医療環境は?

 海士町に常勤される医師お2人が、行政や島外の専門医療機関と連携しながら、島民の健康を支えておられます。
 2010年、2017年には全島でMRI検査が行われました。また、診療所には新しいエコーやCTが整備されるなど、離島に居いながらにして充実した医療が提供されています。

〇海士町ツアーって何?

 今回海士町では、持続可能な離島医療の構築に向けた新たな挑戦を始めました。
 離島医療やへき地医療に興味はあるけれど、最初の一歩をどう踏み出していいかわからない。そんな医師である皆様のために、海士町の医療現場や島民との交流を通じて島の医療×地域を体験する短期ツアー“海士町の「島まるごと診療所」ツアー~課題先進地のプライマリケアを感じる旅~”を開催します。
 官民が一体となり、日本の課題先進地と呼ばれる離島の医療をよりよくするため、積極的に変化を起こしていこうという流れ、環境が整った海士町だからこそ、短期間でも多くの知見が得られること間違いなしです!
 参加人数が限られますので、参加されたい方はこちらからお早目にお申込みください!ページ下方に申し込みリンクあります。

〇関連リンク

海士町紹介動画
海士町の「島まるごと診療所」ツアー~課題先進地のプライマリケアを感じる旅~

 

 

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